グローバルリーダーが実践する「考える週」

バースの海浜版として発展したのがブライトンです。海洋療法という健康法に加え、散策、観劇、社交を織り交ぜた保養地で、現在のビーチ・リゾートや保養の旅のパイオニアとなりました。

このように、現在の旅のルーツと言えるものは、自国では習得できない教養や技術、他の国の政治や文化、豊かなライフスタイルについて学び、社交の経験を積むことにありました。旅は自分を高める格好の機会だったのです。

同じ滞在型でもバカンスとは対照的に、世界のグローバルリーダーが敢えて自分を世間から切り離し、思考を整理する内省の旅の代表格が、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が実践していた「シンク・ウィーク(Think Week)」です。

ゲイツは年に2度ほど、休暇とは別に1週間ほどオフィスを離れ、日々のルーティーンから解放されました。それは、タスク過多で生産性が低下している脳をリセットし、クリエイティブなエネルギーを取り戻すための文字通り「考える週」でした。

クリエイティブなエネルギーを取り戻せる

シンク・ウィークの間、友人や社員はもとより家族でさえ彼と連絡を取ることは禁止されていました。自分を取り巻くすべてから遮断された静かな状態に身を置き、高いところから自分を俯瞰する。それによって心身が休まり、気持ちがリセットされ、クリエイティブなエネルギーが取り戻せたのだそうです。そして、ともすれば見失いつつあった自分の目標や夢について、効果的に考え直すことができたと言います。

山田 理絵『グローバルエリートが目指すハイエンドトラベル 発想と創造を生む新しい旅の形』(講談社)

マイクロソフト社で生まれた多くの重要なイノベーションは、このシンク・ウィークの間にビル・ゲイツが浮かべたアイディアがベースになったと言われています。特に、シンク・ウィークから戻ったゲイツが役員に発信した「インターネットの高波」という社内メモは、同社のインターネット事業の成功のきっかけになりました。

忙しいビジネスリーダーにとって、家族旅行以外に1週間の休みを取って一人エスケープすることは、非現実的に映るかもしれません。しかし1、2泊、あるいは週末や連休を利用すれば、自分を外部から遮断し、どこかに籠って思考を整理することはできそうですし、特に人生の転換期にはそのような時間を持つことが必要ではないでしょうか。

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