テレビ局への影響力では、ジャニーズ事務所も及ばない

最近、吉本は安倍晋三首相に接近し、政府の教育事業にも参入している。沖縄の「基地跡地の未来に関する懇談会」に大崎会長が出席するなど、お笑いだけではない方面へも進出しているのである。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、お笑い業界から“本格参戦”したのが吉本興業。目指すは『スポーツの総合商社』」だと、スポニチ(2018年10月17日付)が報じている。

元大リーガーの石井一久や黒田博樹、斎藤隆、サッカーでは日本代表でプレーした経験を持つ選手たちなどと契約しているという。さらに、テレビ局への影響力でいえば、ジャニーズ事務所など及ぶところではないこというまでもない。

ノンフィクション・ライターの西岡研介が書いた『襲撃 中田カウスと1000日戦争』(朝日新聞出版)で、在京テレビ局関係者がこう語っている。

吉本の機嫌を損ねたら、番組自体が潰れてしまう

「吉本は、800人のタレントを抱える日本最大の芸能プロというだけでなく、今や“笑い”というソフトをほぼ独占している、テレビ局にとっては、最大のコンテンツホルダーなんです。

この不況の折、どの(テレビ)局でも、(番組)製作費を抑えるのに四苦八苦している。よってどの局も自ずと、製作費が安くつく、お笑いや、バラエティー番組に走る。お笑いはもちろんのこと、バラエティー番組にも今や、芸人は必要不可欠な存在ですからね。

だから今では、どの局を見ても、若手芸人の“ネタ見せ”番組や、ベテランや中堅の芸人さんが司会を務めるバラエティーばかりで、お笑い芸人の姿がテレビに映らない日はないでしょう。その最大かつ安定した"供給源"が吉本なんです。

その吉本に、所属芸人を引き揚げられたらどうなります? 番組はたちまち成り立たなくなる。しかも吉本は、それらのお笑いやバラエティー番組の制作自体に携わっている。吉本が制作にかかわっている番組は年間2000本とも、3000本ともいわれてます。さらには(それらの番組の)スポンサーまで、吉本がつけてくれるケースも少なくない。そんな吉本の機嫌を損ねたら、番組自体が潰れてしまうというのは、我々の世界では“常識”なんです」

この証言は、今から12年も前のことである。