アンダーアーマーがスポーツシューズ市場にガチンコ本格参入
20年前、その存在を知っていた日本人はほとんどいなかったのではないか。しかし、現在は日本のスポーツシーンにすっかり浸透している。スポーツ用品・衣料品大手の米アンダーアーマーだ。米国で1996年に創業して、わずか10年ほどで全米を席巻。その勢いは日本国内にも伝播した。日本ではテーピングの輸入販売からスタートしたドームが総代理店になっている。
そのアンダーアーマーが、ランニングシューズへの本格参入を目指している。ナイキ、アディダス、ニューバランスの海外ブランドに、アシックス、ミズノの国内メーカー。さらにはホカオネオネ、オンというニューウエーブがひしめく激戦区だ。レッドオーシャンともいうべき分野で、最後発のアンダーアーマーにはどんな勝算があるのだろうか。
その成否のカギを握るアスリートがいる。9月15日のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)に出場する岩出玲亜(24歳)だ。彼女は2017年7月、ドームに入社したマラソンランナー。東京五輪マラソン日本代表を決めるMGCには男女合わせて43人が出場を予定しているが、そのなかで唯一、アンダーアーマーのシューズを履いている。
女子は12人しか出場しないことを考えると、「3枠」を突破できる確率は40%(MGCファイナルチャレンジで同設定記録の2時間22分22秒をクリアした選手がいない場合)。国内のランニング市場ではチャレンジャーであるアンダーアーマーだが、なかなか面白いところを突いている。
ランナー上級者用のシューズは販売していなかった
アンダーアーマーは2012年頃からランニングシューズを展開している。現在は大型スポーツ店でも販売しているが、当時は売り場に置いてもらうのもひと苦労だったという。ドームランニング部の藤井雅義部長はこう振り返る。
「実績のあるメーカーの商品を削ってまで、アンダーアーマーを置いてくれるのか。信頼がないので、シューズ置き場のスペースが決まっている以上、新規参入は簡単ではありませんでした。当初は直営店やネット販売が中心だったんです」
少しずつランニングシューズでの認知度を高めたが、ランナーのハートをガッチリつかむところまでは至っていない。なぜなら、アンダーアーマーにはサブ3(マラソン3時間切り)を狙うような上級者が履くモデルがなかったからだ。ランナーでいえばサブ4モデルまでで、主にジョギング用が中心だった。