ちょっとした工夫で「見やすい」環境に

目の健康を意識していても、見ようとするものがぼやけたり、暗く感じたり、ゆがんで見えたりと、生活に不便を感じる状況になることは誰にでも起こります。こうした状況を耳慣れない言葉かもしれませんが「ロービジョン」と我々は呼んでいます。「視力がいくつ以下」などのはっきりした定義はなく、見えづらさを感じていればロービジョンといえます。

見えづらさをサポートする「ロービジョンケア」は、家庭でも行えます。例えば、白い茶碗だと米粒がわかりにくいですが、黒などの濃い色の茶碗にすればご飯がはっきり見えるので、残すことなく食べることができます。まな板も、片面が白、片面が黒などの濃い色のものだと、食材の色に合わせて両面を使い分けることで、調理がしやすくなります。

洗面台のふちや家具の角に、はっきりした色のマスキングテープを貼るのもよいでしょう。角が際立つのでぶつかる危険が少なくなりますし、位置がはっきりするので物も置きやすくなります。

当院では、トイレは壁や床の色を濃い色にすることで、白い便器や手すりの場所が際立つようになっています。また、細い線と太い線が組み合わさった明朝体の表示は読みにくいため、行き先や場所を示す表示は、見やすくわかりやすいゴシック体を使っています。

▼家具のふちにはっきりした色のマスキングテープを貼る

井上賢治
医療法人 社団済安堂理事長 井上眼科病院院長
千葉大学医学部卒、東京大学医学部大学院修了。眼科専門医。専門は緑内障。138年(創立1881年)の歴史を有する日本有数の眼科専門病院のトップを務める。著書に『視力0.1でも豊かな生活を送る 目の健康を守る本』など多数。
(構成=大井明子 撮影=石橋素幸)
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