「再着陸を断念して帰還すべき」との慎重論も

報道によれば、JAXAの上層部では3カ月ほど前から「再着陸は断念して地球に帰還すべきだ」との慎重な意見が多かった。

はやぶさ2は、1回目の着陸(2月22日)で地表の砂や石を採取できたと考えられている。仮に再着陸で機体が損傷した場合、帰還が不可能になって採取した砂と石などの試料などこれまでの成果がすべて水泡に帰すリスクがある。かけた事業費290億円も無駄になる。今後計画される火星や月への探査にも大きな影響が出る。

実際、初代のはやぶさは、小惑星のイトカワに着陸したときに機器が壊れて一時行方不明になった。

1回目の着陸の際にはやぶさ2のカメラが砂で汚れ、再着陸のための目印が見つからない恐れもあった。

「100点満点で言うと、1000点です」

それでもはやぶさ2の運用チームは再着陸に挑んだ。その挑戦の裏には努力の積み重ねとそこから得られた成果があった。

運用チームは、はやぶさ2の機体状況やリュウグウの地表状態など条件を何通りにも変えて組み合わせ、着陸シミュレーション(模擬実験)を10万回実施し、そのいずれにも成功するという成果を得た。

カメラの汚れの問題は、はやぶさ2の姿勢制御装置の精度を上げて乗り切った。

確かな技術があるなら着陸しない選択肢はない。再着陸は実行され、はやぶさ2は地球からの管制に頼ることなく、自らの制御によって予定通りの時間に、大きな岩のないわずか半径3.5メートルの狙ったスポットにみごと着陸した。しかも地下の岩石も採取できた可能性が高い。

11日の記者会見で、はやぶさ2計画の責任者であるJAXAプロジェクトマネージャの津田雄一さん(44)は「100点満点で言うと、1000点です」と喜んでいたが、その通りだと思う。