社説に取り上げたのが産経だけだった理由

新聞社説は、はやぶさ2の快挙をどう論じているか。そう思って新聞各紙をめくったが、社説として取り上げているのは7月14日現在、産経新聞1社だけである。

11日にJAXAが記者会見しているのだから、早ければ翌12日付の社説には書けるはずである。事実、産経新聞はそうしている。なぜ他紙はそうしなかったのか。

理由は簡単だ。選挙戦が展開中で、掲載する社説のスケジュールが決まっているからである。

参院選が7月4日に公示され、投開票は21日の日曜日だ。このとき各紙の社説は毎日のように、各政党・党派の政策を論じる。年金、消費税、アベノミクス、憲法改正など、テーマは多岐にわたる。それぞれに担当の論説委員を割り振れば、あらかじめ予定が組める。13日から15日は3連休で、論説委員も休みが取りやすい。

そうしたスケジュールで動いているところに、はやぶさ2の快挙が飛び込んできた。休み返上で予定を変更するか。それとも予定通りやるか。おそらく産経以外は緊急対応を見送ったのだろう。これだから「社説はつまらない」と言われるのだ。

快挙を支えた「できることは全部やる」の精神

産経社説はこう主張している。

「小惑星探査における日本の技術の高さを、さらに確固たるものにして世界に示した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の開発、管制チームの『勇気ある挑戦』を大いにたたえたい」

見出しは「『挑戦する勇気』に学ぼう」。賛成できる主張だし、見出しもいい。

さらに産経社説は「はやぶさ2の快挙を支えてきたのは、初代のはやぶさチームから受け継いだ『できることは全部やる』という精神であろう」と指摘したうえで、こう書く。

「2回目の着地については慎重意見もあったという。重大なトラブルで帰還不能になれば、最初の着地で採取した貴重な物質も失ってしまう。だが、津田雄一プロジェクトマネージャは2回目の着地を前に『はやぶさ2のミッション自体が、積み上げた技術による挑戦であり、やらないという選択肢はなかった』と語っている」

沙鴎一歩も前述したが、「再着陸せずにそのまま地球に戻せ」という慎重な意見は強かった。それを乗り越えたのが10万回の着陸シミュレーションだった。そうした技術の積み上げが「やらないという選択肢はなかった」という判断に結び付いたのだ。