すべての書類を1カ所にまとめる「ポケット1つ原則」
衣服(とくに男性の衣服)にはポケットがたくさんあるために、どこに入れたか分からなくなってしまいます。もしポケットが1つしかなければ、このような問題は起きません。ですから、「ポケットがたくさんあっても、すべては使わず、1つのポケットだけを使うべきだ」と私は考えています。これを「ポケット1つ原則」と呼ぶことにします。
しかし、この原則はなかなか実行できません。その理由は、現実にはポケットがたくさんあるからです。例えば、鞄やキャリングカートには「これでもか、これでもか」というほどのたくさんのポケットがあります。
「分別して収納すれば、探しやすくなるだろう」という考えで作っているのでしょうが、実際は逆です。たくさんありすぎて、どこに入れたかが分からなくなるのです。もし分別ポケットを一切なくしたキャリングカートができれば、どんなに使いやすいかと思います。
「超」整理法の実行は本能との戦いでもある
実は、先日も、ポケットがたくさんありすぎるための事故にあいました。普段あまり使わないクレジットカードを鞄に入れて持ち出したのですが、数日経ってから思い出して探したところ、見つからなくなってしまったのです。あらゆる鞄のあらゆるポケット、衣服のポケット、そして家の中のあらゆる場所を探したのですが、見つかりません。結局、カードの再発行を依頼したのですが、その数日後に、ある服のポケットから偶然発見されました。
押し出しファイリングは、すべての書類を1カ所にまとめるので、「ポケット1つ原則」を実現しています。
しかし、これも簡単には実行できません。パスポートを収納した封筒を、新聞記事を収納した封筒の隣に置くことには、どうしても心理的抵抗が働きます。「重要なものは、隔離して別のところに置く」というのは、人間の本能だからです。別の場所に置くために紛失してしまうにもかかわらず、この本能を克服できません。
「超」整理法の実行は、一見したほど簡単ではないのです。
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2017年9月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。近著に『入門 AIと金融の未来』『入門 ビットコインとブロックチェーン』(PHPビジネス新書)など。
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