目立たないところに投資する豊かさ
肌触りのいいシーツ、うっとりするほど美しいランジェリー、旅行バッグにしのばせるパスポートケース。普段他人からはあまり目につかないものや、「あってもなくても死なない」といわれるようなものに人知れずお金をかけるとき、私たちは豊かさを感じることがある。
その密やかな投資の陰には、特別にアピールしなくたって、積極的に日々を楽しもうとしている姿勢と「誰かに見られてもいいし、見られなくたっていい」。そんな信念を感じるからかもしれない。
働く女性として、身だしなみや持ち物のステイタスにこだわるのは至極当然なこと。けれど、パッと見の目立つ部分ばかりにこだわって、人目につかないところでとことん手を抜いていると、つくられた身だしなみは一気にハリボテ感が高まってしまう。それがどこか“ニセモノ”なのを、私たちは敏感に感じ取ってしまうのだ。
「あなた不在」の仕事に周囲は興味がない!
他人からあまり注目されないもの、使用頻度の低いものへ投資するのは、日々の生活に余裕がなければできないこと。ましてや自分自身を軽視していれば、家の中で使うものや下着、バッグの中身などにはなかなか予算を回せないのが現状だ。
けれど、自分で自分を喜ばせるため、鼓舞するため、そして承認欲求とは関係のないところで生きるとき、私たちは自分のためだけにお金をかけたくなる。見た目や使い勝手を重視したバッグの中から、「好き」主導で選んだ小物を取り出すとき、忙しさでなおざりになっていた自分自身への敬意を取り戻し、閉じ込めていた本心を思い出すきっかけにだってなってくれる。
こうして“隠れ名品”もまた、真摯に選ぶことで、われわれ働く女性にとって小さな、けれど大切な相棒になってくれる。それはとても大事なことで、なぜなら、あなたらしさがない仕事には、誰も興味がないのだから。