これから日本の大企業がとるべき方策
【宮内】戦後の輸出産業は、日本を廃墟から世界第2位まで押し上げました。あのころの経営者は、リスクを取り、イノベーティブであり、それから世界を見ていたんですね。本田さんや松下さんはもちろんそうですが、当時はサラリーマン経営者も廃墟から立ち上がる創業者精神を持っていたのかなと。
【柳井】いや、そのころでもサラリーマン経営はダメじゃないですか。宮内さんは違いますよ。本当にゼロからやられてね。サラリーマン経営なら、きっとアメリカのリース業界をそっくりマネして失敗していた気がする。
【宮内】われわれの会社はベンチャービジネスで、野武士みたいなものでした。野武士はお城がないから、食い扶持を毎日探さないといけません。新しいことをやるのも、そうせざるをえないからでした。そうしているうちに会社の社風やDNAといったものができてくる。最初から大きなお城があったら、前例のあることしかやらなかったかもしれない。
【柳井】お城があると、みんな錯覚するんですよ。それこそ大商社や大銀行に行ったら、すごい本社が立っています。でも、立派なのは本社であって、あなたじゃないのよ(笑)。若い人は、それに気づかない。
【宮内】あと、親がよくないですよ。一生懸命育てて、いい学校へ行かせて、いい会社に入らせて。人生の大事な選択なのにブランドしか見ていない。これじゃ若い人は勘違いします。
【宮内】もう一ついま、日本の経営者がチャレンジしなくてはいけないのはグローバル化です。最初に言ったように、日本発のグローバル経営の構築が必要でしょう。まだ答えは出ていないと思いますが、柳井さんのやっておられることがロールモデルの1つになればいいなと思いますね。そういう意味で、オーナー企業はすごく頑張っているんですよ。でも、それ以外の企業からはイノベーションが生まれていない。
【柳井】大企業はぜんぶ分社化して、それをグループ化すればいいんですよ。各社にいい経営者がいたら成長するし、いなかったら成長しない。それから分社化すると遠心力が働くから、グループは求心力をつけるように経営者がやっていく。宮内さんは、金融の世界でそれをうまくやっているので。いま金融はすごくチャンスがありますよね。僕がいま40代なら、金融ででかいことを考えるし、社会的にプラスになることをやっていると思う。だから宮内さんには、もっと頑張っていただかないと(笑)。
【宮内】いま若い経営者は、怖いけど面白いことが山のようにあって、うらやましいですよ。私は見守らせていただきます(笑)。
【柳井】いや、僕は宮内さんのような人が出ないと、日本の大会社はぜんぶ潰れるんじゃないかと思います。サラリーマンで、宮内さんのような考え方をしている人はいないじゃないですか。僕は気に入らない人とは付き合わない主義。付き合うのは、自然にベンチャー企業の人が多くなります。宮内さんはえらくて、大会社の人も含めてぜんぶと付き合ってきた。だから宮内さんに日本の会社の道筋を断ってもらわないと。