「1滴なめただけでまるでエキス」のよう

「今日はイベント日を知らなくて来たのですが、珍しいゲイシャも飲めて満足です」

千葉県から来た女性2人組(60代の母親と30歳の娘)は笑顔を浮かべながら語る。「ゲイシャ」についての知見もあり「初めて飲んだのは6年ほど前で、もう1人の娘が『還暦祝い』に送ってくれました」と話す。「コピ・ルアク」(ジャコウネコのふんから取れる希少なコーヒー豆)を飲んだ経験もあるという。

2人が頼んだのは、「エスメラルダ2019」(3000円)と「シャンソン ゲイシャ」(2000円)のゲイシャコーヒーだ。「エスメラルダは、こんなに澄んだ色は自分が淹れても出せないし、少し冷めてもおいしい」(お母さん)、「シャンソンは1滴なめただけで、まるでエキスでした」(娘さん)と、そろってかなりのコーヒー通とお見受けした。

それにしても1杯100円のコーヒーが飲める時代に、高額コーヒーがなぜ売れるのか。

サザコーヒーは、今年1月17日にテレビ東京系の経済情報番組「カンブリア宮殿」に登場し、「パナマゲイシャ」も紹介された。

「放送後、『ゲイシャ専門店』を掲げるKITTE店は一気に行列店となりました。現在、客足はかなり落ち着きましたが、ゲイシャの売れ行きは好調です」

店長の坂本愛さんはこう語る。最近は外国人客も目立つという。

1杯1万円超でもほぼ毎日売れる

「コーヒーはワインの世界に似てきた」と多くの業界関係者が話す。特に「スペシャルティコーヒー」と呼ばれる高級品(総収穫量の3%ともいう)など、希少価値の豆ほどその傾向が強い。

「産地」「栽培方法」「収穫した豆の乾燥法」などに生産者が注力し、微妙な違いを楽しむ消費者も増えた。愛好家は高額コーヒーでも支出をいとわない。太郎さんによれば、「1杯3000円のゲイシャコーヒーは、KITTE店で、毎日5~10杯は注文がある」。同店には1杯1万円超のゲイシャコーヒーもあるが、こちらも「ほぼ毎日出ている」という。

一方、1杯100円のコンビニコーヒーも人気だ。その品質には専門家から一定の評価があるほど進化している。ワインと同じように、価格帯も広がっているのだ。

良質なコーヒー豆が取り合いに

一見、活況を呈しているコーヒーだが、気になる点もある。

例えば世界的には、生産量を上回るペースで進む「コーヒー消費量の拡大」だ。経済成長が続くアジアや中国が著しく、これらの国や地域は人口も多い。

「特に東南アジアで消費が伸びています。一方、中国はもともとお茶の文化なので、経済成長とコーヒー消費量拡大の関係は、今後の状況を精査しないと分かりません。ただしスターバックスなど大手コーヒーチェーン店は積極的に出店しています」