“一人ラーメン”や“一人寿司”現象が女性の間でも広がっていると同時に、ガッツリ食べる女性も増えているという。そんな女性心理をつかむ外食産業の作戦とは――。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/PhotoTalk)

お寿司屋さんで「カウンター」デビュー

この連載の前回記事「しなやかに男性化」する日本女性の消費」を目にした知人から、こんな声が寄せられました。最初、筆者の記事とは意識せず、タイトルに目を留めて読んだそうです。

「私自身も、以前であれば1人で外食することはあまりなかったのですが、先日、どうしてもお寿司が食べたくなり、近所のお寿司屋さんで“カウンターデビュー”しました(笑)」(20代の女性会社員)

昔から「1人でバーに行く」女性はいましたが、回転寿司ではない寿司店のカウンターは、男性でも心理的なハードルが高いものです。

面白いもので、「未知の消費体験」は、一度体験すればスッキリします。「また行きたい」か「一度行けば十分」と思うかは、人それぞれ。ちなみに冒頭の女性は「また行きたい」と思ったそうです。

例えば、近所に「ラーメン店」ができたとき、関心を持つ人は多いでしょう。「ラーメンが苦手」な人は少ないので、「おいしいか・おいしくないか」が気になるのです。未体験のままだと小さなストレスを感じる人もいます。そして一人でも試しに食べに行くのです。

このような“一人寿司”や“一人ラーメン”現象と同時に、もう一つの女性の変化として、“がっつり現象”というものがあります。今回は「好きなものを、がっつり食べたい」に潜む消費者心理を考えてみましょう。

カロリーを気にせず「とんかつ」を楽しむ

山形県酒田市に本社がある「平田牧場」という会社を、筆者は10年以上前から取材しています。

同社は養豚農場(直営や提携先の飼育農場・肥育農場)で「平田牧場三元豚」(さんげんとん)や、「平田牧場金華豚」(きんかとん)というブランド豚を育てており、飼育頭数が年間に約17万頭。レストランも経営しており、自社の豚肉料理を「とんかつ」や「しゃぶしゃぶ」料理で提供。山形県など東北地方以外に東京都内にも複数の店があります。

6月中旬、東京駅前「KITTE」(=キッテ。日本郵便が経営する商業施設)にある平田牧場の店で食事をしました。ここは料理メニューに、あえてカロリー表示をしていません。

以前この店で会食した時、同席した女性(30代の経営者)はこう語っていました。

「とんかつを食べたいときは、その日の気分でロースやヒレを選びたいですよね。そんな時はカロリー表示をしてほしくないです。別の日にカロリーを抑えますから」

そう言いつつ、コース料理で提供されたメニューはすべて完食していました。