ウーマン読者の方で、男性用髭剃りの売場に行ったことがある人は少ないかもしれません。実はほとんどの商品パッケージが青。それはなぜなのでしょうか。消費者心理のスペシャリスト桶谷功さんが、売り場の工夫について解説します。
商品を手に取り、確認する男性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/zoranm)

ジレットよりシックが売れるのは日本だけ

こんにちは、桶谷功です。

最近はオンラインでの買い物も、ごく日常的なことになってきました。コロナ以降は特に、リアル店舗で買い物する機会が減った方も多いのではないでしょうか。しかしそうはいっても、新製品を発見したり衝動買いをしたりといった買い物の楽しさは、まだまだリアル店舗のほうに軍配が上がります。

今回はショッパーインサイト(店頭での消費者心理)について、お話ししたいと思います。まずはパッケージや商品の「色」は、私たちの想像以上に商品選びに影響するというお話から。

女性には馴染みのない商品で恐縮ですが、男性用の髭剃り(電気シェーバーではなく、T字型のカミソリのほう)を例にとって、色の及ぼす影響を見てみましょう。

日本では男性用のT字型のカミソリといえば、シックとジレットという二大メーカーが有名です。日本ではシックがいちばん売れていて、ずっとシェア5~6割を占めていますが、実はこれは日本だけの現象で、世界全体ではジレットがシェア7割を占めています。シックはグローバルでみると、シェア2割程度の小さなブランドにすぎません。

ジレットに全方位で戦っても勝てないことがわかっているシックは、スキンケアブランドとして勝負すべく、「モイスチャーシェービング」と銘打った商品など、肌をいたわる商品に特化しています。

いっぽう海外において、髭を剃るという行為は、男らしくてワイルドなものだというイメージがあります。特にアメリカでは、カウボーイがナイフでひげを剃ったりするのがカッコいいとされる。「肌をいたわる」なんて軟弱だと受け止められてしまうわけですね。

かたや日本の若者は肌が弱く、肌荒れを起こすことが多いので、刃の部分にモイスチャー成分がついていたりして、剃ってもヒリヒリしないことを重視します。そのためか、日本ではシックとジレットのシェアが逆転しているのです(ただし最近では欧米でも肌の弱い男性が増えていて、世界的に「肌をいたわる」方向に向かっているようです)。