高齢者による自動車事故が報道されるたびに、運転の危険性や車の安全性に注目が集まりがちだ。モータージャーナリストの池田直渡氏は「高齢者の暴走事故に簡単な解決方法なんてない。この問題を考えるなら、誤操作の制御だけでなく、代わりとなる移動手段を含めた複雑な議論を惜しまないことだ」と指摘する――。
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車の死傷事故は目に見えて減っている

池袋でのプリウスの暴走事故以来、「踏み間違い事故」、あるいは「プリウスの安全性」について書いてくれという依頼は多い。多分、「プリウスがいかに危ないか」とか「高齢者の運転の危険について」とか、「この方法で事故は防止できる」みたいな快刀乱麻のスカッとする原稿が求められているのだと思う。

しかし残念ながら、そういう嘘は書けない。原因がたったひとつで、それさえ解決すれば全てがうまくいく方法なんて、何であれそう簡単にはない。

そもそも統計的に見れば、平成16年(2004年)以降すべてのデータにおいて死傷事故は明らかに減少している。まず事故は増えていない。統計の図表1からこれは明らかだ。事故全体は減少していることをまず頭に入れてほしい。なおグラフの出典は図表3を除き内閣府の「平成29年交通安全白書」である。

図表2からは75歳以上に限って他の世代と比べて死亡事故比率が高いことが分かる。74歳までの平均に対して、確かに約2倍というデータになっている。だから年齢層別に見た場合、高齢者の事故が多いことは事実であるが、先に述べた様に全体の事故件数は減っており、図表3からは75歳以上80歳以上とも、免許人口10万人当たりの死亡事故は年々減っていることが分かる。なお、このデータのみ警察庁の「平成29年中における高齢運転者による死亡事故に係る分析について」から抜粋している。