96歳の今でも全店舗の巡回を続ける

96歳になった今でも、全店舗の巡回はずっと続けています。だいたい週末の1日か2日を巡回日に充て、車で移動しながら1日6店から8店程度回ります。店舗は子会社を含めると200店くらいあるのですが、毎週巡回するので全店舗を年に2、3回は回れるわけです。

こまめに店を見て回るのは、それぞれの店の状態を把握することが目的ですが、それとともにそこで働く人たちを見ておきたいという思いもあるからです。

到着すると店長がやって来ますので、まずその顔色を見ます。40代前半の者が多く、すでに結婚して持ち家があるため、単身赴任しているケースが多いです。そこで、最初に健康状態や家族のことを尋ねます。

「奥さん、元気でやっとるか?」
「はい」
「ひと月に2度くらいは帰るようにせんといけんよ」

業績については数字を見れば分かりますが、店の雰囲気や従業員の士気といったものは、実際に出向いて現場の空気に接したり、会話を交わしてみなければ掴めません。やはり「人」に関わることが何より大切なので、今もしっかりと把握していきたいと思っているのです。

「ワクワク、ドキドキする思い」で走ってきた

山西 義政『ゆめタウンの男 戦後ヤミ市から生まれたスーパーが年商七〇〇〇億円になるまで』(プレジデント社)

さて、このたび長年にわたる経営者人生に一区切りつけることになり、取締役会長を退任し、名誉会長に就任しました。ただ、肩書は変わっても、生涯現役を貫く気持ちに変わりはなく、今までどおり毎日出勤し、週末には店舗の巡回を続けていくつもりです。

わが人生、おもしろいことがたくさんありました。うまくったり、ダメだったり、いろいろと経験してきましたが、いつもワクワク、ドキドキする思いを楽しみながら、走りぬいてきたというのが実感です。苦しい、つらいと思ったことはほとんどありませんでした。

小売業が大きく変わろうとするこれからの時代、行く手に何が待っているかは分かりません。でも、予測不能であるということは、それだけ大きな可能性もあるということです。

「ワクワク、ドキドキする思い」は、これからもしばらく続きそうです。

山西 義政(やまにし・よしまさ)
イズミ名誉会長
1922年9月1日、広島県大竹市に生まれる。20歳で海軍に入隊し、当時世界一といわれた潜水艦「伊四〇〇型」に機関兵として乗艦。オーストラリア沖ウルシー環礁への出撃途上、西太平洋上で終戦を迎える。戦後、広島駅前のヤミ市で商売の道に進む。1950年、衣料品卸山西商店を設立。1961年、いづみ(現イズミ)を創業し、代表取締役社長に就任。同年、スーパーいづみ1号店をオープン。1993年、代表取締役会長。2002年、取締役会長。2019年5月より名誉会長。西日本各地に「ゆめタウン」などを展開し、一大流通チェーンを築く。
(撮影=プレジデント社書籍編集部)
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