セブン&アイ・ホールディングスは昨年、西日本でGMS(総合スーパー)を展開するイズミとの業務提携を発表した。会見でセブン&アイの取締役は「イズミの売場づくりを学んでいきたい」と話した。イズミの8倍の規模をもつ業界の雄が、そこまで褒めるイズミの強さとは──。

※本稿は、『ゆめタウンの男 戦後ヤミ市から生まれたスーパーが年商七〇〇〇億円になるまで』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

撮影=プレジデント社書籍編集部

営業収益6兆円と7000億円の業務提携

昨年の話になりますが、2018年4月5日、イズミとセブン&アイ・ホールディングスは業務提携で合意しました。

その中身はというと、電子マネーの相互開放、相手グループ店舗内への出店、資材などの共同調達、PB商品取り扱いの検討などを連携して進めるとともに、セブン&アイグループのイトーヨーカ堂との間で、仕入れの統合や輸入品、地域産品などの共同調達、西日本地域の店舗の共同運営や共同出店等を行っていくという、広範囲に及ぶ提携内容です。

セブン&アイといえば、全国2万店規模のセブン‐イレブンをはじめ、GMSのイトーヨーカドー、スーパーマーケット(SM)のヨークベニマル・ヨークマート、百貨店のそごう・西武などを展開し、営業収益6兆円という日本を代表する流通グループ。一方、私が58年前に創業したイズミは、西日本を中心に店舗展開し、「ゆめタウン」をはじめとするGMS68店、SM124店を展開していますが、営業収益は7000億円と、セブン&アイの8分の1ほどの規模です。

今回の提携合意も、その1年半ほど前にイズミ側からの申し入れが発端となっていることから、イズミからセブン&アイへの支援要請という捉え方をされる向きも多いのではないでしょうか。

「イトーヨーカ堂」への恩返しという思い

確かに、近年イズミの課題となっている若年層の開拓など、セブン&アイ側に教えていただく点は多くあり、今回の提携が今後のイズミの成長・発展に大きくプラスになることは間違いありません。

しかし、私自身の気持ちとしては、実はこの提携を通じて、公私ともに長年にわたってお世話になった伊藤雅俊名誉会長と、伊藤名誉会長が一代で築いた「イトーヨーカ堂」(「セブン&アイ」よりも自分の中ではしっくりとくる呼び方です)にご恩返しができる、という思いが強いのです。

伊藤さんとのご縁が深くなったのは、ヨーカ堂の店舗を勉強のために見せていただくようになってからです。ヨーカ堂“創業の地”北千住を皮切りに、一時期は新店がオープンするたびに伺って見学させていただきました。さらに、私は当時、「スーパーいづみ」と並行して衣料品製造販売会社「ポプラ」を経営していたのですが、その最大の得意先だったのがヨーカ堂さんで、これが伊藤さんとの距離を縮めるきっかけとなりました。