学力試験がなく書類選考と面接のみで合否を決める「AO入試」。日本の大学で初めて導入したのは、慶應義塾湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)だ。同大の村井純教授は、「導入から30年がたち、“上澄みの優秀な人材”をかなり獲得できている」と胸を張る。その「ガチンコ面接」で必ず聞く質問とは――。
「プレジデントFamily」2019年夏号では「一芸さえあれば『アホでもオーケー』なのか!? 名物教授が教える本当の合格基準」と題したリポートを掲載。(撮影=市来朋久、以下すべて同じ)

慶應SFCの「AO入試」は一芸あればアホでもOKなのか?

1990年に開設した慶應義塾湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)は、その第1回入試から、日本初のAO入試を導入した。

日本で最難関レベルの大学が、学力試験を課さず、志望理由などの書類と面接で合否を決定する。その決断は、当時の日本の教育界に少なからず衝撃を与えた。

SFCの創設に深く関わり、2017年9月までSFCの環境情報学部長も務めた村井純教授は次のように振り返る。

「学力試験のないAO入試で、果たして本当に優秀な人材がとれるのかという疑いの目があったことは理解しています。しかし、30年間を振り返って言えば、かなり“上澄みの人材”を獲得できている。我々のAO入試には、絶対的な自信を持っています」

なぜ、AO入試を導入したのか。その理由は、設立の理念にある。

SFCのもととなる構想は1983年、当時の石川忠雄塾長が慶應義塾125周年の記念式典で明らかにしたものだ。複雑化する新しい時代に活躍できる人材を育てるために、これまでの学問の枠組みにとらわれない新しい領域の研究ができる大学をつくりたいと語った。

「専門分野がある人材をとる必要があった」

「まったく新しい大学をつくるために、教育と研究の多様性を確保したいと考えていました。だが、多様な分野を一から学生に教えていこうとすると、広く浅くなってしまう。これを防ぐには、入学前にある程度、専門性を持った学生たちが入学後も好きなことをやって、『あいつはこれに詳しいから』という形で互いに力を合わせながら、問題を解決していくほうがいい。そのために専門分野がある人材をとる必要があったのです」

専門分野がある人材の獲得手段が、AO入試だったというわけだ。実際、「卒業生一覧」(最終ページに掲載)を見ると、起業家、政治家、学者、アスリート、芸能人、棋士など、さまざまな分野に及んでいるのがわかるだろう。

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