慶應SFCのAO入試で重視される「30分間の面接」の中身

AO入試における選抜は、書類による1次選考と、面接による2次選考で行われる。

「いずれも成績より重視するのは『志願書(志望理由と入学後の学習計画、自己アピール)』と、そして、何よりも面接です」

面接では、3人の教員が30分間かけて、受験生の志望理由を掘り下げてたずねたり、それまでやってきたことについて質問したりする。

「時には学問的な論争になる真剣勝負の場です。学力テストなどしなくても、30分間、第一線で活躍している学者が、3人がかりで1人の受験生を見るわけですから、ごまかしようがないんです。しかも、それを30年続けてきた経験の蓄積があります」

「元祖AO入試」といわれる慶應SFCの創設に深く関わり、2017年9月までSFCの環境情報学部長も務めた村井純教授。

面接官の教員は受験生のどのような点を見ているのか?

面接で教員たちが見ているのは、どのような点なのだろうか。

「『専門分野』に加えて『好奇心』があるか、『意欲』があるか。話していれば好奇心の有無、意欲が本物なのかだってわかります。最近はAO入試対策のための予備校が力を持ってきていますが、面接官からすれば、付け焼き刃の対策では、あいつもこいつも同じことを言っているぞ、とわかる。何が決め手になるかは人それぞれなので、対策できるものではありません。バレーボール日本代表の主将・柳田将洋君は、面接でバレーボールを持ってきたけれど、他の人がまねしても意味はないですよね」

面接では、「コミュニケーション能力」も見られている。

「SFCでは授業における仲間とのネットワークが不可欠なんです。たとえば、『火星に移住したときのエネルギーマネジメントはどうするか』といった課題について、グループワークをして発表するような授業が多い。デザイン、プログラミング、プレゼンといったそれぞれの得意分野を生かして、分業します。こうした授業についていけるのかを見ています」

また、AO入試生が国際的な大会に出場する場合でも、授業の欠席は簡単には認められないという。

「いま東北楽天ゴールデンイーグルスに所属している岩見雅紀君は僕の授業を取っていたけれど、日米大学野球選手権大会でアメリカに行くときも、それだけでは欠席を認めませんでした。欠席するために何をする、という交渉を僕とできるのか。このようなことができないと、卒業できないのです」

「ただし」と村井教授は付け加える。

「高校生は化けることも多い。面接でコミュニケーション能力が低くても、それまでの実績を見て、これだけのことをする力があるのだから、化けるのではないかと期待してとる子もいます。そこは全体のバランスを見て判断します」