都市の下水を麻痺させる油脂の塊
ロンドンをはじめとする世界の大都市で、ファットバーグが深刻な問題となっている。これはファット(油脂)とアイスバーグ(氷山)を組み合わせた造語で、下水道内にこびりついて固形化した油脂の塊を意味する。主に飲食店の排水に含まれている油脂の分解物(脂肪酸)と、水中に溶け出したカルシウムイオンが反応して形成されるという。
そのまま放置していると下水管を完全に塞ぎ、下水が逆流する恐れがあるうえ、ファットバーグには大量の雑菌が含まれているとも指摘される。ファットバーグは日本でも発生していると指摘するのは、国立環境研究所の小林拓朗主任研究員だ。
「特に深刻なのは、小規模飲食店からの排水を受け入れる下水管。飲食店の厨房にはグリストラップ(油水分離阻集器)を設置することが求められているものの、それを通過した排水中の油分の濃度には規制がなく、適切な管理を指導する自治体もありますが、実際の管理は飲食店任せで、清掃を怠ると同装置が十分に機能せず、油脂が垂れ流しになっているケースもあるのが実情です」
ラードのように固まりやすいものに限らず、「植物油のように液状でも下水管内で固形物へと変化する」(小林氏)から厄介だ。飲食店のみならず、家庭排水に含まれる油脂も一因となっているので注意したい。
(写真=AFLO)