固定費と変動費合わせて月計15万円のコストカット実現

ところが五嶋さんは、「会社のコストカットと同じで、一律20%カットでいきますね」と言い出したのです。家計は「一律いくら」と、機械的に削減できるものではありません。いま五嶋さんが家計費として使っているお金を把握し、「必要なもの」と「欲しいだけのもの」を仕分けし、「必要なもの」だけを買うようにする、自分の価値観に合わせた「コストカット」が必要なのです。

例えば、外食も「ただカットする」のではなく、安くておいしい定食屋さんを利用したり、アラカルトをセットメニューに変えるなどでいいと思います。

こうして五嶋さんと一緒に費目別に見直しをかけ、食費は2万2000円減額、日用品費は「ひとりで1カ月に使う分だけ」買うようにしたことで9000円減額、交際費は回数と予算を決めて2万8000円減額、ということに決めました。

このような変動費に加え、固定費も見直しました。

まず、ひとりでは広すぎる部屋からの引っ越しも決断(家賃14万5000円→11万円)。保険は子どもが大学生になり、離婚もしたということで、家族のための死亡保障を見直し、医療保障中心に切り替えました(生命保険料2万7000円→1万2000円)。車も手放し、カーシェアリングを利用することにしました(車関連費2万3000円→4000円)。細かいところでは、スマホも変更しました。

すると固定費だけで計約7万5000円の削減ができ、変動費の減額分と合わせると計15万円にもなりました。家計費全体では、これまでは毎月約10万円の赤字でしたが、月5万円近く貯金ができる道筋が立ちました。「貯金ができるのも大きいですが、収入の範囲内で暮らす大切さがわかったことが一番の収穫です」と、五嶋さんは前向きに話してくれました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/shaunl)

リストラや病気、役職定年後に50代がビンボーになる

今回の五嶋さんは離婚でしたが、リストラや病気、役職定年の影響で、50代の方が経済的にピンチを迎えるケースは少なくありません。老後を前に大きな不安にさらされますが、そんなときはまず、「収入内に支出を収める」ことが第一歩になります。

支出項目を一つひとつ振り返りつつ、不要な支出を減らしていく「痛み」を伴う作業ですが、家計の改善には強い力を発揮します。「人生100年時代」といわれるいま、末永く豊かな老後を過ごすために、ぜひ取り組んでいただけたらと思います。