セクハラをするが「仕事ができる人」をどうするか
元財務事務次官の辞任した4月18日をもって、今、企業が対峙しなければいけないのは「セクハラやパワハラをするが、仕事はできる人」への処遇になったと言っていいでしょう。彼のような人物に対しては、「仕事はできるが、組織に多大なリスクをもたらす人=仕事のできない人」という認識に変わってきています。
今まではセクハラと仕事の能力なら、仕事の能力のほうが重くみられていました。セクハラは「女子どもの問題」として軽く扱われるか、または「個人の問題」「アンタッチャブルなもの」として黙認されてきました。開けてはいけない「パンドラの箱」だったのです。
しかしセクハラは、個人の問題から、「組織の生産性」や「リスクマネジメント」に関わる経営課題になってきました。パワハラも同じく、組織の生産性、マネジメント、イノベーションという観点から、本当に指導に必要かが問われています。
アメリカで「反セクハラ上場投資信託」が登場
アメリカでは、セクハラが企業に与える損失は1社につき約15億円との見方もあるそうです。米系企業はハラスメント対策に余念がありません。近年では、ハラスメント対策は人材獲得戦略であるとも考えられています。どの企業も、「優秀な人材がパワハラ、セクハラだらけの企業では来てくれない」という危機感を持っているのです。
アメリカのウォール街では今、「セクハラ対策をきちんとしているか」が、就職の条件として問われるそうです。米系証券の人事担当者も、「東海岸でMBA(経営学修士)を取得した優秀な人材は、かつてならウォール街に就職してきました。しかし、今は皆シリコンバレーなどの夢のある企業に行ってしまいます」と嘆いていました。
アメリカでは2018年3月、セクハラがあった企業の株を排除する「反セクハラ上場投資信託(ETF)」まで登場したそうです。
(「『見ないふり』企業のリスクに」日本経済新聞 2018年6月29日)