セクハラ被害者が「会社に報告」しない事情

社内でのセクハラ、そしてパワハラに関しても、第一に被害者、告発者を守るという意識を持つべきです。とかく告発者は、「二次被害(告発者自身が非難を浴びること)」に遭いやすいものです。企業は、「報復禁止措置」を徹底する必要があります。

白河 桃子『ハラスメントの境界線-セクハラ・パワハラに戸惑う男たち』(中央公論新社)

ハラスメント通報窓口は、独立性や秘密保持に関して徹底しなければいけません。多くの企業の窓口が機能しないのは、「セクハラ・パワハラ体質の男性や知り合いが窓口にいるので、申告する気持ちになれない」という心理が働くからなのです。

セクハラがあっても被害者が報告しないのは、(1)報告しても被害者が損をするのが予想できる(訴え損になる)こと、(2)そもそも窓口自体が有効ではない(あるかどうかもわからないし、あっても使いづらい)ことが理由です。措置義務違反にならないように設置されてはいても、機能していない窓口が多いのでしょう。

日本経済新聞によれば、セクハラ被害者の6割超が、仕事相手からのセクハラにあっても報告せずに我慢していることがわかっています(図表2)。

セクハラに関する緊急調査
働く女性1000人を対象にセクハラに関する緊急調査を実施。被害に遭った女性の6割超が「我慢した」と答え、その多くが「仕事に悪影響を及ぼすから」と相談もできずにいる実態が分かった。女性活躍の推進には、働きやすい環境が欠かせず、防止対策と併せ意識改革が求められる。
(「6割超が我慢『仕事に影響』働く女性1000人セクハラ緊急調査」日本経済新聞2018年4月30日)
白河 桃子(しらかわ・とうこ)
相模女子大学、昭和女子大学客員教授 少子化ジャーナリスト
東京生まれ。慶応義塾大学文学卒業後、住友商事などを経てジャーナリスト、作家に。少子化、働き方改革、女性活躍、ワークライフバランス、ダイバーシティなどをテーマとし、講演、テレビ出演多数。著書に『後悔しない「産む」×「働く」』(齊藤英和氏との共著、ポプラ新書)、『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』(PHP新書)、『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(是枝俊悟氏との共著、毎日新聞出版)ほか多数。
(写真=iStock.com)
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