日本でも「ハラスメント保険」が現れた

投資家がハラスメントの発覚した企業の株をすぐに手放すのは、アメリカではすでにそうした企業の将来性はないと判断されるせいでしょう。

また日本でも「ハラスメント保険」という動きがあります。保険会社がビジネスにするということは、リスクマネジメントしなければいけないことなのです。

MS&ADインシュアランスグループホールディングス「雇用慣行賠償責任補償特約」の昨年度契約件数は2年前の2.5倍以上に拡大。厚生労働省の調査によれば、「いじめ・嫌がらせ」を理由とする民事上の個別労働紛争は昨年度に7万2000件を突破、8年前の2倍超に達した。こうした保険は、個人がハラスメント被害に遭った場合に弁護士費用を補償するタイプと、企業が加害者として訴えられた場合に賠償金や争訟費用を補償するタイプに大別できる。
(「『セクハラ告発準備保険』契約急増の理由」プレジデント』2018年9月3日号

財務事務次官のセクハラ事件でテレビ朝日が見落としたこと

財務事務次官のセクハラ事件のように、「他社」との間にセクハラが起きた場合、企業は誰を守るべきなのでしょうか?

「他社」との間でのセクハラ事案は、対処を間違うと批判を招き、企業のブランドを毀損するリスクがあります。財務事務次官のセクハラ事件で、テレビ朝日は本来、告発があった時点で、自社の社員を守るために正式な抗議をしたほうがリスクは少なかったでしょう。なぜなら、財務事務次官が辞任してから会見を開いたことにより、「対処が遅い」と批判の声が上がったからです。

一般企業の例でいえば、2018年10月に起きた百十四銀行の会長の辞任があります。社員を他社のハラスメントから適切に守れなかったことが、批判や辞任の原因となっているのです。

一方で、会社が社員を守ったハラスメント事例には、2018年1月に起きた日本ハムの社長辞任事件があります。ある航空会社が、「自社の社員に対して日本ハムの執行役員がセクハラをした」と日本ハムに対して指摘。その結果、加害者の執行役員とともに、一緒にいた社長も責任を取るかたちで辞任となりました。日本ハムは航空会社にとって有力なお客さまですが、会社は社員を守ったわけです。

どちらを向くか、誰を守るかによって、世の中からの評価には大きな差が出ます。