平成元年、流行語大賞で新語部門金賞に選ばれた「セクシャル・ハラスメント」。それから30年が経過した現在でも職場でのセクハラはなくなりません。男性学の第一人者である田中俊之先生が、男性がセクハラ発言をしてしまう背景と対応法を解説します。
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50代のおじさんたちは雑談が苦手

「おめかしして、今日はデート?」「彼氏はいるの?」などと言ってしまうセクハラおじさんの肩を持つつもりはないのですが、彼らが唐突にそうした発言をしてしまう背景を知っておく必要はあると思います。まず、そもそも、50歳ぐらいのおじさんたちは雑談が下手な生き物なのです。年下の女性とエレベーターなどで一緒になってしまうと、天気のことぐらいしか話題がない。

しかも、彼らはバブルを経験した世代。若い頃は夏になると恋人と海へ行き、冬はスキーへ行くという恋愛が当たり前の時代に生きてきました。だから、おそらく彼らにとって恋愛は“皆がしている”ものであり、誰とでも共有できる話題なのです。だから二言目には「彼氏いるの?」となってしまいます。一方、今の20代、30代は恋愛が当たり前の世代ではないですから、「彼氏はいるの?」と聞かれるとドキッとしてしまう。そこにはいわゆる世代のギャップがあるわけです。

男性が女性を舐めていることが根本の問題

しかし、セクハラのもっと根本的な問題はジェネレーションギャップではなく、男性が女性を下に見ている場合に出てくるということです。

例えば「お茶くみ」というと性差別の象徴のように言われますが、そのタスク自体は差別ではない。もし、職場で年配の男性の手が空いていれば、彼がお茶くみをしてもいいわけです。しかし、そういうケース・バイ・ケースではなく、いついかなるときもお茶くみが女性の仕事になってしまうことはよくありません。

私はよく企業の研修でもレクチャーをしますが、「出張から帰ってきた男性が、女性社員に『お土産を配っておいて』と頼むのはNGです」と話すと、男性たちは静まり返ってしまいます。つまり、みなさんそれをやったことがあるわけですね。「お土産を配るのが面倒だから、女性にやらせているんじゃないですか」と問いかけると、みなさんはハッとします。職場でそういった押しつけがあるようであれば、おじさんたちが女性をなめているということですから、女性からすると、なめられないようにしなければいけません。