声優は「話題を呼ぶため」に存在するのではない
制作会社が声優を起用する場合、僕たちのギャランティは制作費から捻出されますが、タレントを起用する場合、彼らのギャランティは広告宣伝費から出されている場合があるのも、そうした事情の背景になっているかもしれません。
よくテレビのワイドショーなどで、タレントが吹き替えを務める新作の公開アテレコをしている場面を見ることがあります。人気タレントが作品に出演すれば、メディアは取材に来てくれますし、制作会社にとっては非常にありがたい存在です。だからこそ広告宣伝費を使ってでも、彼らを起用しているのです。
ですが、作品の質を本当の意味で担っているのは、現実としてアニメーターや音声など、多くの職人たち。僕たち声優も、例外でなくそれに該当していることを忘れてはなりません。そして作品はあくまで制作サイドの所有物であり、僕たち声優はいかに彼らの要望を確実に満たせられるかが重要です。
作品の質を高める上で、職人の存在は欠かせません。そして声優もやはり職人であって、話題を呼ぶために存在するわけではない、という事実を決して忘れるべきではないと僕は思います。
少し前は王子様系、最近はキーの高い声が人気
なお男性声優で言うと、少し前の世代だと甘い王子様系の声が、最近ではキーの高い声が特に求められているように感じます。
流行する声、もしくは人気の声はもちろん存在します。テレビのナレーターなどは如実で、同じ人の声をいろいろな番組で聞くことはよくあると思います。たとえば一日テレビを点けていると、「世界の果てまでイッテQ」のナレーションなどで有名な立木文彦さんの声が何度も聞こえてきた、なんて経験はきっとあるはずです。
ナレーションが大きな意味を持つテレビ番組だと、制作会社側としても安定した実力や人気があるベテランを好んで起用します。だから同じ人に集中して仕事が殺到するのは仕方がないかもしれません。
アニメやゲームのキャスティングも少し前までこの流れが顕著でした。非常に「旬」を重んじ、声優そのものの人気を当然のように重要視していました。