「売り上げ増」の先を読める3つのグラフ

新規プロジェクトを立ち上げるために、その分野に強い提携先企業を探すことになったとしよう。候補は3社に絞られたが、どの企業と組むのがベストか。

検討すべき要素はいろいろあるだろうが、たとえば売上高に注目してみる。5年前の実績を1とした場合、3社ともこの5年間で売上高が3倍に増えており、業績は絶好調だ。しかし、その推移を示したグラフを見ると、増え方が大きく違う。

A社(別図のグラフ①)は3年前までは急伸していたが、この2年は伸びが緩やかになっている。B社(同②)はこの5年間、安定的に成長した。C社(同③)は他2社に比べ最初こそ伸びが悪かったが、直近2年は成長が著しい。

このように、増加を示すグラフは大きく分けて3つのパターンがあるのだ。言うまでもなく3社のうち、今後最も成長が期待できるのはC社だ。なぜなら、加速的に売上高が伸びているからだ。数学でいう指数関数を比喩し、「指数関数的増加」とも言われる。また、1年単位で見た場合、「毎年の増える量が増えている」という言い方もできる。自動車にたとえるなら初速から、アクセルを踏み込んで「加速的増加」している状態だ。

たとえば、最近注目を集めているソーシャル経済メディア「ニューズピックス」(ユーザベースが運営)が、この③のパターンだ。有料会員の数が加速的に伸びており勢いがある。

2番目に成長が期待できるのはB社だ。B社の売上高は「比例的に増えている」と言える。増え方が一定で毎年同じペースで伸びており、今後も安定した成長が見込める。

一方、A社は成長が鈍化している。C社の指数関数的な伸びとは逆の動きだ。1年単位で見ると、この2年は「増える量が減っている」。つまり「減速的増加」になっており、伸び悩んでいる状態と言え、あまり明るい展望を期待できない。このまま何も手を打たなければ、横ばいからマイナスに転じる懸念もある。

この①のケースとしては、あるネット生命保険会社が典型例だ。会社設立以来、安さや保険内容の透明性などをウリに急速に保有契約件数を伸ばしてきた。まさに加速的増加であるが、ここ数年は減速的増加に転じてしまったことがある。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/MicroStockHub)

このように増加を示すグラフには3パターンあるが、減少も同じだ。「加速的減少」「比例的減少」「減速的減少」に分けられる。

なお、ある曲線において曲がる方向が変わる点のことを「変曲点」と言う。加速的増加から減速的増加に転じる点、またはその逆で加速的減少から減速的減少に転じる点を指す。大きな変化は突然起きるのではなく、その前に準備段階があり、変曲点はそれを見極めるポイントになる。

ビジネスでも、単に売り上げが増えた、減ったで一喜一憂するのではなく、増えているときでもその動きをよく見て、変曲点に注意しなければならない。売上高が加速的増加から減速的増加に転じた段階で、迅速かつ的確に次の手を打てば、頭打ち状態になったり、反落するのを防御でき、再び上昇気流に乗せることも可能になってくるのだ。

堀口智之
和から 代表取締役
山形大学理学部物理学科卒業。2010年、大人のための数学教室「和(なごみ)」を創業。月間600人を超える社会人が学ぶ。著書に『「データセンス」の磨き方』がある。
(構成=田之上 信 写真=iStock.com)
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