一方、事前に情報収集がしづらい相手の場合は“名刺トーク”も一種の挨拶として有効だという。

相手の名刺をただなんとなく受け取るのではなく、名前を確認し、「○○さんとお読みすればよろしいでしょうか」などと問いかけたり、名前の由来や出身地を聞いたりすると話は自然にはずむ。自分と同じ出身地である、同窓である、といった共通点があると親近感がわき距離感がぐんと縮まるのだ。

新入社員や転職した人は、適度な自己開示を

新入社員や転職した社員の場合、社内の人ともその都度、挨拶するシーンがあるだろう。

「その際、大事なのは適度な自己開示の挨拶です。ポイントは長々とした自己紹介をしないこと。空気の読めない人間というレッテルを貼られてしまいます。簡潔に、出身地や趣味・特技に加えて、ほどよい失敗談や自虐ネタなどを交えたものであれば円滑なコミュニケーションになり、相手の警戒心を解くことにもつながります」(菊原氏)

菊原氏によれば、手短な自己開示は急にやろうとしてもできない。よって、前もって開示する内容を決め、挨拶する準備・練習をするといいと話す。

挨拶ベタなら黙って書面を渡し「紙に挨拶」させる

口ベタで挨拶が苦手という人はどうしたらいいだろうか。そういう場合は「とってつけたような挨拶ではなく、黙って書面を手渡す方法もある」とコミュニケーション術の書籍を多く著している弁護士の谷原誠氏は言う。

「伝えるべきことをあらかじめ書面にまとめておき、『本日話し合いたい内容をこの書面に記載いたしましたので、ご確認ください。よろしくお願いします』と言うのです。何かの交渉であれば箇条書きで、『1、納期について。2、保証について……』と順番に書いていけば、話し合いは自然とその流れですることになり、主導権を握ることができます」

つまり面会の冒頭で、口で挨拶するのではなく、紙に挨拶させるというわけだ。口頭で伝えただけだと話し合いの内容にしばしば誤解が生じることもあるが、書面ならそれも軽減できる。さらに、あとで「言った、言わない」の議論を防ぐこともできる。これも理論武装した挨拶の効果である。

管理職▼話の間に「沈黙」をはさむ勇気

挨拶の内容の全体像を伝えて詳細を語る流れ

一般的に管理職は、挨拶慣れしていると思われる。朝礼や懇親会などで部下を前に「ひと言」を求められるケースも多いはずだ。よって挨拶上手かといえば、案外そうではない。むしろ、下手な部類の人もいる。菊原氏は言う。