「挨拶するときの話の内容そのものがつまらないケースもありますが、話をする順番や構成があまり練られていないケースも多いです」

準備不足なのか思いつきの話をしたり、起承転結のない話を延々としたり。聞く側にとっては、何が目的で何がゴールかわかりにくい。したがって、途中で聞くのをやめてしまうこともある。

こうなると、話すほうも聞くほうもまったく不毛な時間になってしまう。

どのような対策が必要だろうか。

「挨拶やプレゼンテーションが上手な人が必ず守っているルールがあります。それは、まず話の内容の全体像を伝えてから詳細へ進むという流れ。『今日は〇〇についてお話しします。主に3つのポイントがあります』と全体像を伝え、『ひとつ目のポイントは……』といったように展開すれば、聞くほうも頭を整理しながら理解することができます。それだけで挨拶全体の好感度をぐんと高められるはずです」(菊原氏)

重要な話の前に「……」と沈黙を置く

一方、谷原氏は管理職が挨拶やプレゼンなどスピーチをする際、話の前後に沈黙を置くといい、と語る。

元アップル社長 故スティーブ・ジョブズ氏(AFLO=写真)

「よどみなく話をしていたのに突然、シーンと静かになったら、部下は『何事か』と思い、それまで以上に注意を向け、より集中して話を聞くようになるでしょう。だから、ここだけはしっかり気持ちの中にとどめてほしいという内容の話があったら、一度、沈黙を置くと効果的です」(谷原氏)

実はこのテクニックは、多くの著名人が実践している。例えば、元アップル社長の故スティーブ・ジョブズは「iPhone」発表のプレゼンの場において、多くの関係者や内外のメディアの前で、冒頭に「2年半この日が来るのを待っていた」と切り出したあと、驚くべきことに7秒間も沈黙した。

これは頭が真っ白になって言葉がでてこなかったわけではない。戦略的な沈黙だ。7秒の空白の時間をつくったことで聴衆の中にいい意味での緊張感と期待感が一気に高まったこともあり、そのプレゼンは大成功となったのだ。

世界的なベストセラー『人を動かす』の著者であるデール・カーネギーも『話し方入門』という本の中で、「沈黙の効能」を語っている。アメリカ合衆国の大統領だったリンカーンは演説の中でしばしば重要な話をする前にしばらく沈黙を置いて、重要な話をして人々を引き付けたと説明しているのだ。

とはいえ、ジョブズでもリンカーンでもない一般人にとって、話の途中で沈黙するのは勇気がいる。しかし、挨拶やプレゼンの途中に「えーと」「えー」と無意味な言葉をつなぐのはかえって聞き苦しい、と谷原氏は語る。