なぜ、親はデイサービスやショートステイを嫌がるのか
つまり介護の現場では「本人の都合」と「家族の都合」があり、しかもそれが異なることが多い。ケアマネジャーとしては両者の意向を聞いたうえで、その折り合いをつけることに腐心するのだそうです。
Iさんによれば、介護サービスのなかでも「本人都合」と「家族都合」が一致しやすいジャンルと一致しにくいジャンルがあるといいます。
「一致しやすいのはまず福祉用具、レンタルの介護用ベッドや車いすなどです。ケアマネとしてはご本人の要介護度や体の状態を考えて用具を選んだうえ、料金も含めて相談しますから、ここでもめることはほとんどありません。また、ホームヘルパーや訪問看護師が家に来てケアをする訪問系のサービスも一致しやすい。なかには自宅に他人が入るのは嫌だという方もいますが、来てもらわなければケアできない現実があり、最終的には一致します」
プライドが傷つけられ、“見捨てられ感”を抱く
一方、両者の意向が一致しにくいのがデイサービス、ショートステイといった通所系のサービスだそうです。
「通所系のサービスは、ほぼ家族の都合によるものだからです。家族に仕事があり、日中はケアできないため利用するのがデイサービス、出張などで留守にするため、あるいは家族が仕事と介護で疲弊しているといった事情から、数日施設で過ごしてもらうのがショートステイです。ご本人は住み慣れた自宅で過ごしたいし、ここでケアしてもらいたいというのが本音。それができず施設に預けられるのは家族の都合であり、そのことでプライドが傷つけられるし、“見捨てられ感”を抱くこともある」
「また、介護施設自体に抵抗感がある方も少なくありません。在宅介護が始まった人には、自分はまだ元気という意識がある。にもかかわらず、半ば強制的に施設に連れて行かれ他の要介護老人と一緒くたに扱われるのは屈辱なのです。そんなこんなでご家族と相談のうえ通所サービスの話を切り出すと、多くの方が難色を示しますし、拒絶する方もおられます」
通所のサービスは「家族都合」であり「本人都合」ではないというわけです。
「ご本人の性格や考え方にもよりますが、デイサービスまでは抵抗感を示しつつも受け入れる方は多いんです。介護する息子や娘にも仕事があるのだから仕方がない、と。ところが、ショートステイはそうはいきません。大変大きなハードルとなります。家族が介護から解放されるために自分を施設に預けるのだ、という気持ちになるんですね」