フェルミ推定には「封筒の裏の計算」という別名もある。「ちょっと計算してみましょう」とホワイトボードでも使ってスマートに割り出せば、会議もスムーズに進行しようというものだ。

昼休みに1時間蛍光灯を消すことの効果は?
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昼休みに1時間蛍光灯を消すことの効果は?

さて「昼休みの1時間、会社の蛍光灯を消すことによる1カ月のコストダウン効果」をフェルミ推定でどう算出するか。図に従って説明しよう。

ポイントは2つ。「会社の蛍光灯の本数」と「蛍光灯1本の1時間あたりの電気代」をどう類推するかである。この2つが推定できれば、掛け合わせて「会社の蛍光灯を1時間消すことによる1日のコストダウン効果」が出る。これに月の営業日数を掛ければ、1カ月分となる。

「会社の蛍光灯の本数」は今使っている会議室の蛍光灯の本数から推定する。同じ規模の会議室がフロアあたりいくつあるか。会社は何フロアを使っているか。ここから、会社全体の本数が算出される。

「蛍光灯1本の1時間あたりの電気代」の割り出し方にもいろいろある。今はワット数を入れると電気代を簡易計算してくれるウェブサイトもあるが、手元にパソコンがなくても自宅の電気代のような身近な数字を使って推定できる。

一般家庭の1カ月の電気代は1万円ぐらいが相場だろうか。そこから基本料金を引いたものが実質的な一カ月の電気代。そのうち照明器具に使っている比率はどれくらいかを考える。24時間フル稼働の冷蔵庫や、エアコンのように電気代がかさむ電化製品と比べれば、夜間や早朝に使用が限られる照明代の比率はそう高くない。電気代の10%と見積もる。

蛍光灯は白熱灯2分の1本で換算する。1カ月の照明代を日割りし、さらに蛍光灯の本数と1日の使用時間で割れば、「蛍光灯1本の1時間あたりの電気代」が出てくる。

以上のような推定作業から、「会社の蛍光灯の本数」は約1000本、「蛍光灯1本の1時間あたりの電気代」は約0.1円などと算出。そこに1カ月の営業日数を掛け合わせ、「昼休みの1時間消灯で月約2000円のコストダウン」という答えが導き出せる。

(小川 剛=構成)