ロジックツリーで問題の広がりを押さえつつ深掘りしていくと、ツリーはどんどん広がっていく。だが、「この問題には原因は100あります」といっても、企業の経営資源であるヒト・モノ・カネには限りがある。すべてに対策を打つことは現実的ではないし、仮にできたとしてもすべてが中途半端に終わる。

したがって、ロジックツリーで問題の原因追求や解決策の具体化を行った後は、どれに焦点を当てて取り組むべきか絞り込まなければならない。つまり、「優先して取り組むべき課題はこれだ!」と決める、課題決定力が必要なのだ。

このとき、2つの作業をしてみるとよい。まず、関係性の薄いツリーの枝葉はすべてそぎ落とし、問題となる現象と根本的な原因に強い“因果律”が見えるかどうかを確認する。もう一つは、結果として起きている現象と原因の関係が逆転していないかどうかを考えることだ。

ツリーを広げ、深める段階ではアイデアベースでもかまわない。しかし、絞り込むためには、定量分析的観点から因果関係の強さを見極め、重点課題を明らかにする必要がある。

たとえば「風が吹けば桶屋が儲かる」というよく知られたことわざがある。しかし、ロジックの各段階を検討すると、風が吹いて砂が舞う確率は80%程度かもしれないが、砂が目に入る人は100人に1人いるかどうか。さらに、その中で失明する人など1000人に1人もいないだろう。このように各段階の関係性を分析すると、「風が吹く」ことと「桶屋が儲かる」ことに因果関係がないことがわかる。

広さと深さがカバーできる【生命保険営業の例】
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広さと深さがカバーできる【生命保険営業の例】

以上のプロセスを、実際のケースで説明していこう。図はある保険会社で営業改革に取り組んだ際に作成したロジックツリーを簡略化したものである。

まず営業現場のヒアリングや顧客インタビュー等を行いながら、顧客接点に沿って業務プロセスを分解する。

ここで大事なことは、「モレなくダブリなく」視野を広げて考えることである。新規顧客の獲得ばかりに目が向いていると、アフターフォローという、実は既存の顧客から質の高い紹介客を獲得するうえでもっとも重要な項目が漏れてしまう。想像力を発揮し、自社、契約者、代理店等さまざまな視点から考えることだ。