「顧客から毎年5%のコスト削減を要求されるため経営は苦しく、家族総出で深夜まで作業を続けていました。年々経営が苦しくなる悪循環。機械も借り物だったため、オペレーションを改善することもできなかった。油まみれで働く祖父母の姿を見て、父は『これが正しい人間の働き方なのだろうか』と疑問を抱いていたそうです」

(写真上)作業場では若手社員が職人技を再現していく。(同下)壁を取り払い、部署を撤廃。話しやすい環境をつくる。

ルーティンワークに追われ疲弊するのではなく、人間本来の働きがいを取り戻したい、みんなが生き生きと楽しく働ける会社にしたい。その一念で昌作氏が踏み切った改革は、大胆というしかありません。なんと受注の80%を打ち切り、事業内容を試作品の製造、すなわち多品種少量生産に完全に切り替えてしまったのです。この時期には食費も切り詰め、3年間悪戦苦闘の日々だったといいます。

そのなかで、昌作氏はオンラインシステムの導入を図りました。まず、熟練工の技能を数値化、データベース化し、プログラムをつくりました。そのうえでレンタルの機械を撤去し、かわりに最新のNC旋盤を設置。パソコンと接続して自動運転するシステムをつくりあげました。

現在、この「HILLTOP System」と呼ばれる制御プログラムは、息子の勇輝氏に引き継がれ、人工知能(AI)やロボット技術を使ってさらなる革新に繋がっています。現在では、365日24時間稼働する無人工場となりました。

データの設計も、プログラミング画面をクリックするだけでできるまでに進化、言語入力すら必要ありません。

「入社したての新人でもできる、簡単な仕様になっています。さらにいえば、プログラミングそのもののAI化も進めており、23%はすでに無人化でできるようになっています」

このようにHILLTOPでは、AIや機械に作業を任せることによって、エンジニアたちは機械設計やシステムデザイン、プロダクトデザインなど、より付加価値と創造性の高い仕事を手がけられるようになりました。

エンジニアにとっては最高の仕事場であり、遊び場

社内に併設された最先端の「Foo's Lab(フーズ ラボ)」では、デザイナーや研究者などとコラボレーションし、自社プロジェクトやクライアントのアイデアを自由に形にしています。最新製造マシンや工作ツールを一通り揃えたこの部屋は、エンジニアにとっては最高の仕事場であり、遊び場となっています。

「受注した仕事に必要だから機械を買うのではなく、興味を持った機械を買って、これで何ができるかなと考えるのが我々のやり方です」