わざわざ「令和6年」と元号で書く産経らしさ
「新たに迎える令和の世を表象するように、国民の気分を一新させる全面的な変更となる」
冒頭部分からこう書くのは、4月10日付の産経新聞の社説(主張)である。産経社説は読売新聞の社説ほどではないが、安倍政権を擁護する主張が多い。この社説でも「令和の世の表象」「気分の一新」と指摘しているが、やはり安倍政権の思惑はその辺にあると思えてならない。
産経社説は「新紙幣は令和6(2024)年度上期から発行される。その前後には関連需要を創出する経済効果も期待できよう。政府・日銀は混乱なく新紙幣が浸透するよう、準備に万全を尽くしてほしい」と書く。
わざわざ「令和6年」と元号で書き、財務省が懸念する経済効果にまで言及するところは、産経社説らしい。
見出しにも「令和」を使い、「令和の新紙幣 偽造防止へ準備を万全に」と訴える。本文では偽造防止についてこう主張する。
「政府が定期的に紙幣を切り替えるのは偽造券事件を防ぐのが最大の目的だ。新紙幣は、肖像の3D画像が回転するホログラムを採用するなどの特殊技術を施す。日本の高度な印刷技術を駆使し、卑劣な犯罪がつけいる隙のないよう工夫をこらしてほしい」
新産業育成による経済成長を重視する政府の狙い
産経社説に言われるまでもなく、安倍政権は新紙幣の偽造防止に努めるはずだ。紙幣の偽造を防止する技術と偽造技術は絶えず、その技術を競い合っているからだ。北朝鮮など反国際社会的国家もコンピューターを使ったハイテク紙幣偽造技術の開発を進めている。警戒が必要だ。
最後に読売社説(4月10日付)を見てみよう。
「新たな時代にふさわしい通貨になるか。国民経済に良い効果を与えることを期待したい」と書き出し、見出しは「国民経済への効果期待したい」である。
その読売社説は前半でこう書く。
「1万円札の肖像には、数多くの企業設立に携わり、『日本資本主義の父』と呼ばれる実業家の渋沢栄一が選ばれた。新産業育成による経済成長を重視する政府の狙いが込められているのだろう」
「流通量が最も多い1万円札の人物が変更されるのは、1984年に福沢諭吉になって以来だ」