頭脳明晰、自信過剰な高齢者ほど騙されやすい

「こんなウソに騙されるなんて」と思うかもしれませんね。でも、人はパニックになると、様々な方法を検討するのではなく、目の前にある方法で何とか早く危機を脱しようとします。

心理学ではこの特性を「ヒューリスティック」といいます。犯人はこれを利用し、まずは溺れさせ、藁を差し伸べる、つまりパニック寸前まで追い込み、カネさえ払えば救われるというストーリーに仕立てているわけです。注意したいのは、頭脳明晰、自信過剰な高齢者ほど騙されやすいこと。多くのトラブルを乗り越えてきた経験があるため、「自分だけは大丈夫」と過信しやすいからです。これまでの人生経験に頼って深く考えずにラクをしようとするのも騙されやすい要因です。

一番の対策は、親とニセ電話詐欺について騙す側の視点からよく話し合い、自分たちはどんなリスクを抱えて暮らしているかを一緒に考えてみることです。肝心なのは、カネを要求されたときは相手が誰であろうと疑うことです。

打つべき一手:カネを要求されたら、相手が誰であろうと疑え!

西田公昭
立正大学心理学部教授
1960年生まれ。84年関西大学社会学部卒業。詐欺・悪徳商法の心理学研究の第一人者として新聞、テレビなどのマスメディアでも活躍。著書に『マンガでわかる!高齢者詐欺対策マニュアル』ほか。
(構成=河合起季 撮影=大沢尚芳 写真=iStock.com)
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