むし歯の治療で最も気になるのは、「治療費」と「期間」について。実際の治療内容とともに、この2点について歯科医師が解説する。

治療の相場、原価、期間を全リサーチ

「いつまで治療が続くのかわからないし、治療費がどれだけ膨らむのか不安だ。だから、歯医者さんから足が遠のいてしまう」――。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Ocskaymark)

保険診療であれば、現役ビジネスパーソンの患者の負担額は、かかった医療費の3割で済む。しかし、職場で「歯科医師に数万円の自由診療をしつこく勧められて、断るのに苦労した」という話を耳にすると、不安な気持ちに襲われる。ましてや治療期間のメドがつかないのでは、仕事の算段も覚束なくなり、「それなら歯の治療よりも目先の仕事」となる。

そこで実際の治療で、どのくらいの期間と、患者負担でいかほどの費用がかかるのかを、東京のJR四ツ谷駅近くでタムラタイチ歯科診療所を開き、新宿区四谷牛込歯科医師会の理事も務めている田村太一院長に尋ねてみた。

すると「プレジデント誌の読者を想定してみました」と言いながら田村院長がシミュレーションしてくれたのが2つのケースだ。1つ目は、昔からむし歯だった奥歯の痛みが気になり始め、悪い部分を取り除いて詰め物をする40歳の女性。2つ目は、奥歯のう蝕が進行して歯根しか残っていない50歳の男性だ。症状の程度は、前者が中度で、後者は重度と言えよう。

しかし、女性の中度の症状に対する治療でも、3カ月もの期間を要する。よく見ると、初診から本来のむし歯の治療に入るまでの期間が1カ月もあって、長いようにも思える。そんな取材者の怪訝そうな表情を見た田村院長は、「治療期間も費用も、症状によってかなり変わってきます。今回のケースは綿密に治療を行った、ある意味で理想的な治療を行ったケースです」と前置きしたうえで、次のように説明する。

「初診の際の問診で患者さんの治療の目的、つまり『主訴』を把握しながら、その後の治療計画を検討します。そして口のなかの状態を確認し、必要に応じて歯垢や歯石を除去するなどのケアを行い、健康な状態に戻してから、本来の目的の治療に入ります。口のなかが不健康なままだと細菌が繁殖して、せっかく付けた詰め物やインプラントなどが長持ちしなくなるからです」

何事も急いては事を仕損じる。しかし、合点がいったのも束の間、次に費用に関する大きな“岐路”が待ち構える。「保険診療か、それとも自由診療か」の選択を迫られるのだ。言うまでもなく、自由診療は保険診療よりも高い。