▼これだけで一日中暮らせる5つの動詞
1950年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。ニュートン社に23年勤務した後、47歳のときに独立。これまで『たった5動詞で伝わる英会話』など、英語関連の本を150冊出版。
「英文法=時制×文型」――というのが、私の英語メソッドの基本です。そして、文型を構成する主語、述語、目的語、補語などのなかで、最も重要なのがエンジン役である「本動詞」。その習熟すべき本動詞は「have」「give」「get」「take」「make」の5つです。この5動詞だけで1日過ごせると、ネーティブ・スピーカーの友人たちも同意してくれます。
では、どのように使いこなすのかを見ていきましょう。大事なポイントは、各動詞の本質的な意味を理解し、その動詞が持つ全体像を把握することです。これは英語のプロでも意外とできていません。
まず、「have」。一般に「持つ、持っている」という意味ですが、より広く解釈し「切っても切れない関係になって、自分のコントロール下に置く」と理解しましょう。「He has a cottage」も、自分のコントロール下に別荘があるから。「She had a taxi waiting(彼女はタクシーを待たせた)」「He had a good wage(彼はいい給料を得た)」といった使い方も同様に理解できると思います。
「give」は「与える、あげる」ですが、これは「相手を『have』の状態にする」と理解します。つまり、切っても切れない関係にするということです。そうすると、「Give thanks to him(彼に感謝の意を伝えてください)」「Can you give me the time?(時間を教えてもらえますか?)」という表現も、人や情報との関係を密接にするためだとわかります。
本質的な概念を理解し、実際に運用してみる
「get」は「得る」という意味で間違いではありませんが、「手に入れる」よりも「手に入る」に近く、さらに幅広く「いままでと違う状態になる」ととらえます。そうすれば、「I got a shock(私はショックを受けた)」「He got her to go alone(彼は〈彼女を説得して〉彼女を行かせた)」のような使い方も理解できると思います。
「take」は基本動詞のなかで最も積極的なニュアンスがあり、単に「取る、つかむ」というよりも、「自らの意思で手を伸ばしてつかむ、獲得する」と理解するのが適切です。そうすると、「She took a taxi(彼女はタクシーを使いました)」も納得できるのではないでしょうか。「take」にはさらに「手に入れた状態を維持する」という意味もあり、「I,ll take you home with my car(家まで車で送ってあげましょう)」は、あなたをキープした状態で移動するということになります。
「make」は意思の強さを感じさせる動詞です。したがってこれも単に「作る」というより、「外力を加えて物事を別の状態に変える」と理解しましょう。「What made you so angry?(なぜそんなに怒っているの?)」の場合、どんな力が加わってあなたをそんなに怒らせたのかと考えます。「make up(化粧する)」も、化粧品の力を借りてより美しく変化するということです。使役動詞としての使い方も同じです。外力を加えて無理やり何かをさせる、「He made her go(彼は彼女を行かせた)」のような使い方をします。同じ使役動詞でも、「have」「get」「let」にはそこまで大きな強制力はありません。
このように5つの動詞にはそれぞれ複数の意味がありますが、それを単純に覚えるのではなく、その動詞が持つ本質的な概念を理解することが大事です。そのうえで実際にどんどん運用する。そうすることで意外と簡単に表現ができて、英語は確実に上達します。