60年以上「通知表」がない公立小学校

伊那小学校には、何と60年以上もの間「通知表」がありません。固定的な時間割やチャイムもありません。「探究」を中核にする以上当然のことではありますが、公立小学校でもここまでのことができるのかと、多くの人は驚かれることと思います。「探究」(総合)の長い歴史を持つ、きわめて貴重な学校です。

この学校の探究テーマは、毎年各クラスの先生と子どもたちで考えて決めています。その長い歴史における、無数のプロジェクトの成功と、そしてうまくいかなかった例もきっとあったでしょうから、そうしたさまざまな経験から、わたしたちは実りある「探究」の条件を大いに学び取れるはずです。

以前、伊那小学校の林武司校長とご一緒した際、伊那小では、先生同士がとことん対話し協働する機会がたっぷり設けられているというお話を伺いました。さらには、「伊那小を切る会」なるものも、40年近く毎年続いているとのこと。現状に満足せず、常に互いにリフレクションする機会を意図的に整えることは、「探究」を中核にした学校には特に不可欠なことなのだと思います。

「探究」の実践には蓄積がある

和歌山県にある、文字通り「プロジェクト」をカリキュラムの核とした「きのくに子どもの村学園」と、その全国に複数ある系列校からも、学ぶべき英知はたくさんあります。ご興味のある方には、ぜひ、この学校の創設者、堀真一郎さんの『きのくに子どもの村の教育』をお読みいただければと思います。

大阪には、やはり個人や協同での「探究」を核にした「箕面こどもの森学園」もあります。こちらの学校も、辻正矩さん他の『こんな学校あったらいいな』という本で詳細を知ることができますので、お読みいただければ嬉しく思います。

世界的な注目を集めている国際バカロレア(IB)の教育プログラムも、文科省の推進もあって、今少しずつ日本国内に普及し始めています。これもまた、教科横断的な「探究」をカリキュラムの中核とした教育です。詳しくは、文科省のホームページや、『セオリー・オブ・ナレッジ──世界が認めた『知の理論』』などをご参照いただければと思います。

公立であれ私立であれオルタナティブ学校であれ、実りある「探究」の実践は、このようにかなり蓄積されているのです。