※本稿は、苫野一徳『「学校」をつくり直す』(河出新書)の一部を再編集したものです。
興味・関心・学ぶペースは子どもによって違う
教育について考える時、次のことをおさえておくのは本来基本中の基本です。
子どもたちは、それぞれ興味・関心も、学ぶペースも、自分に合った学び方や適した学習空間や、いつどこで誰とどのように学び合えばいいかなども、全部異なっているということです。同じ個人においても、これらは成長の過程において変わってきます。
でもこれまで、学校はそのほとんどを統一してきました。いつ、何を、どのように学ぶかということを、あらかじめ決めてきたのです。
子どもたちは、今は算数をやる気分でなくても、「いいから算数をやりなさい」と言われ、好きな本をとことん読み続けたくても、「これから授業です。本をしまいなさい」と言われてしまうのです。これでは、もともとある「学びたい欲求」が殺されてしまうのも当然です。
これが、もっと自分のペースで、自分に合ったやり方で、また自分に合った教材などで学べたとしたらどうでしょう?
「自分で計画を立てる」と学習意欲が変わる
実はこうした問題意識をもとに、世界には「学びの個別化」の実践を長い間続けている学校がたくさんあります。アメリカ生まれの「ドルトン・プラン教育」や、ドイツ生まれオランダ育ちと言われる「イエナプラン教育」などが有名です。どちらも100年ほどの理論と実践の蓄積があります。
これらの学校では、子どもたちが、自分たち自身で1週間、時に1カ月以上の学習計画を立てます。もちろん、特に低学年の子どもたちは先生が手助けします。でも慣れてくると、自分で学習計画を立てることができるようになります。友だちの力を借りて立てることもあります。
ここでの学ぶべき内容は、あらかじめ決まっています。まさに「出来合いの問いと答え」です。でも、その内容を、お仕着せの時間割通りに学ぶのではなく、自分のペースや学び方で学び進めることができたなら、子どもたちの学習意欲には大きな違いが出るはずです。何しろ、分からなくても授業が先に進むことはありませんし、分かっていたら、自分のペースで先に進んでいけるのですから。