麹町中学校は定期テストを廃止した

ICTは、今後そのために活用していく必要があります。AIを活用したEdTech(EducationとTechnologyの合成語)は、何度でも受け直せる単元や内容ごとのテストを、そう遠くない将来、一人ひとりにカスタマイズしてくれるようになるでしょう。

工藤勇一氏が校長を務める東京都千代田区立麹町中学校は、上記のような発想から2018年度に出題範囲の決められた「定期テスト」を廃止しました。代わりに、単元ごとのテストと、年5回、出題範囲のない「実力テスト」を行い、子どもたちの学力状況を把握しているとのことです。単元テストは複数回受け直すことも可能です(工藤勇一『学校の「当たり前」をやめた』)。

前に紹介した伊那小学校にせよ、麹町中学校にせよ、公立学校でも、これほどにラディカルな実践をすることは十分に可能なのです。麹町中学校の今後の展開を、ぜひ興味深く注視したいと思っています。

苫野一徳(とまの・いっとく)
熊本大学教育学部准教授
1980年生まれ。博士(教育学)、専門は哲学、教育学。著書に『教育の力』(講談社現代新書)『どのような教育が「よい」教育か』(講談社選書メチエ)『勉強するのは何のため?』(日本評論社)他多数。全国の多くの自治体や学校等でアドバイザーも務める。現在、共同発起人として、幼小中学校が一体となった軽井沢風越学園の設立を準備中。
(写真=iStock.com)
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