マック利用者は「他人にはすすめない」という人が多い
マックのNPSはマイナス54.4%でした。日本では多くの産業でマイナスに出る傾向にあり、外食店舗のNPSは平均でマイナス40前後です。マックのNPSは飲食業の水準からみても低い数値といえます。つまり、マック利用者は、他人にはおすすめしたくないという人のほうが、おすすめしたい人よりも多いということです。それなのになぜ絶好調なのでしょうか。
データから、マックは比較的成果が出やすい販促施策が奏功したことにより、一時的な業績改善をしているだけの状態なのではないかと考えられます。
NPSを下げている大きな要因は「食事への安心感」です。顧客が食の安全性に関して不安の感情を持っていることから、異物混入の影響が尾を引いていることがうかがえます。また「栄養バランス」「料理の味」「コストパフォーマンス」についても、消費者の求めている水準とのギャップがありました。
このことから、マックの顧客は、価格のわりに提供される商品の品質が低いと感じていると考察できます。
アプリのクーポンで「お得」を強力に感じさせる
ただ、詳細を見ていくと、一定の顧客からは価格が安いと感じられていることが見て取れます。なぜ顧客はその様に感じているのか。考えられる理由のひとつは「価格の見せ方」です。
マックでは「バリューセット」と呼ばれるセットメニューを訴求しています。これは商品を単品で買うよりも安くなるので、「得をした」という感覚をもちやすいといえます。それに加えてマックではスマホアプリを使ってクーポンを配布しています。クーポンを使えば、ただでさえお得に感じられるセットがさらに安くなるのです。しかもアプリは18年末の時点で、累計5400万ダウンロードされており、とても強力なプロモーション手段となっています。
クーポンは一時的に「お得」を感じさせる手段として強力です。「セットメニューが670円ですよ」と売り込まれるより、「690円のセットメニューが670円ですよ」と言われたほうが「買ってみようかな」と思ってしまいます、わずか20円の値引きでも、お客を店に呼ぶ誘因になるのです。
特にハンバーガーなどのファーストフードは、衝動的に食べられやすい類の料理です。アプリでのクーポン配布は、お客の衝動買いを誘う手段として強力です。
価格だけでなく、「店内の雰囲気・居心地」についても評価はポジティブでした。マックは古い店舗の閉鎖や改装を積極的に進めており、一定数は店内の雰囲気などについて評価をしていました。ただし、もっとよくしてほしいとの声も多々ありました。