▼入院・手術編
どう解釈すべきか不安になる一言

「セカンドオピニオンを受けたらどうですか?」

患者さんが診断に疑問を持っている場合は、セカンドオピニオンをお勧めします。紹介状も書きます。ほかの医師に私の診断の妥当性を伝えることにもなりますから。その結果、「奥仲の言っていることはまともなんだ」と納得してもらえれば患者さんの満足度は増します。

ただし、がん治療に限って言えば、本当にセカンドオピニオンが必要なケースは格段に減っています。がん治療は「がん診療ガイドライン」に沿って行われますから、どの病院で受診しても大きな違いが出る余地がないのです。近頃、信頼できる医者を求めて病院をわたり歩く「ドクターショッピング」をする方が増えています。これはお金の無駄なだけでなく、治療の遅れにもつながります。

もっとも、患者と医者とはいえ人間同士の付き合いですから好き嫌いもあります。特に女性患者さんの場合、生理的に苦手なタイプの医者に触れられるのが嫌で、「セカンドオピニオンを」と言って病院を替える人がいます。(奥仲医師)

医者のほうからセカンドオピニオンを勧めることも増えてきました。少し前までは、患者がおずおずと切り出しても、「馬鹿野郎! 信用できないなら、もう来るな」なんて言う医師もいましたから、大きく変わったものです。

セカンドオピニオンの有効性は病状によって違うようですが、神経内科や精神科などの領域で、セカンドオピニオンを受けてよかったというケースをよく聞きます。知人の親御さんが認知症だと診断されたのですが、たまたま雑誌で「治る認知症」と言われる特発性正常圧水頭症について知り、セカンドオピニオンを求めて大きな総合病院の神経内科を受診しました。すると、まさにその症状であることがわかり、適切な治療を受けられたそうです。心配なら受けるべきですね。(松井氏)

(手術は)「成功しました」

そもそも、「手術の成功=完治」ではありません。手術の成功とは、事前に説明した手術が予定通りにできたということを指しており、99%は成功するものです。医療ドラマによく描かれるように、手術中にドバドバ出血してしまうなんてことはほぼありません。手術は成功したのに術後の経過が思わしくないことがあるのは、感染症や合併症が起きた場合です。こればかりは予想がつきませんから、手術の成否とは関係ありません。術後に病状が悪化した場合、「手術自体はうまくいったけれど、持病の糖尿病のせいで合併症が出た」などと言っても言い訳めいて聞こえるのでしょうが、実際にそうとしか言えない場合もあります。(奥仲医師)

「余命◯カ月です」(短めに宣告される場合)

本来は、3カ月~半年レベルで「あと◯カ月は大丈夫ですよ」と言うべきだと私は思います。「大丈夫」というのは、仕事をしたり人と食事に出かけたりできるという意味です。バリバリ働いている人であれば、余命をお伝えすることで、今後について目安にしていただくことができますから。その後、3カ月なり半年なり経ったところで、その時点で予想される余命を再度推測することになります。進行がんの場合、治療をしている段階では、例えば抗がん剤が効くかどうかで余命は変わってきます。ですから、余命は短めに、予想される最も短い期間を言うことが多いのです。よく、「余命半年と言われたのに、3年も生きた」ということがあるのはそのためです。(奥仲医師)