野田 励さん●建材メーカー社長
コミュニケーション不足の製造部門に風穴を開ける
「心から褒める」「まず褒める」「わずかなことでも褒める」と、『人を動かす』には相手を褒めることの重要性が随所に出てくる。この教えを日々実践するようになったのが、建材メーカー・ノダ社長の野田励さんだ。
「私は1975年生まれ。カーネギーの教えでは、『人を褒めること』にもっとも共感しますが、この世代までの人間は褒めることにも褒められることにも、基本慣れていません。体に染み付いていない習慣は、ともするとすぐに忘れてしまうんですよ」
そこで野田さんは、毎日、社員の日報を読みながら「褒めネタ」を探すようになった。社員と顔を合わせる前、直属の上司に「最近褒められるようなことはなかったか」と聞く。社員が元気に挨拶すれば「おっ、元気でいいな」と声をかけ、センスのいい服装なども褒める。本人いわく、「全力で褒める努力をするようになりました」。
また野田さんは、社内において製造部門のコミュニケーションに不安を感じていた。
「工場といった、長時間、同じ場所で同じ仲間と仕事を共にする社員は、ある意味、家族的なつながりになります。それはそれでいい部分もありますが、面と向かってきちんと話す・聞くという態度がおざなりになりやすくもあるんです」
「説明はしない。背中を見て学べ」という職人もいる世界で、社内の風通しをよくしたいと考える野田さんは、カーネギーの教えを社員全員が共有できるよう取り組もうとしている。まだ始めて間もないが、昔気質の職人にも人の話を聞く必要性は徐々に浸透してきた。上下間の意思疎通が深まって、組織の力が強まることを期待している。
ここまでカーネギーの教えを咀嚼して、変わることができた人たちを紹介した。しかし『人を動かす』を読んではみたものの、なかなか身につかなかった人はどうすればいいのだろうか。
「本にはやるべきことの原則と、それに関連するエピソードが多く出てきます。それをセットにして覚えておき、折に触れて相手の事情に合わせたエピソードを紹介するようにする。実例を題材に相手と議論することで考えが深まり、結果、自分の中に定着していくと思います」(貫井さん)
「本にはやるべきことがたくさん書かれているので、もっとも印象に残ったものを1つ徹底してやってみるといいのでは。SNSで実践している仲間を見つけて、つながるのも効果的かもしれません。記録を発信すると『いいね!』がもらえて、きっとやる気が続きますよ」(安藤さん)