つまり大当たりの価値は同じでも、見せ方次第ではドーパミンの総量を多くし、より脳に残る、多幸感を与えるようにできるのです。
もっとも、ドーパミンの総量が多くなるのは期待値が概ね50%から75%の間です。2016年にヒットし、今なお現役の人気機種「真・北斗無双」(サミー)でも、最も期待値の高いリーチはこの数値になっています。
また北斗無双は報酬予測が容易だったことも人気の原因でしょう。人間の脳が処理できる情報の塊(チャンク)は3つか4つなのですが、北斗無双の演出は台が出す情報をユーザーが整理しやすい、よくできたつくりになっていました。演出のグループが脳の限界を超えないように細心の注意を図り、ユーザーが混乱しないような仕様にすることで「面白い、もう少し打ってみよう」という気にさせ、人気の機種が誕生するのです。
そして実は、この仕組みは仕事にも活かせるのです。部下の脳内では、仕事を始める段階で、「この仕事が終わればこれくらいは上司から褒められそうだ」という報酬予測が無意識に立てられます。そして、仕事が終わった後に「よくやったな」と褒められることで、再び快感を獲得するのです。これは、パチンコの当たりと演出の関係と同じですよね。
しかし、同じ仕事を繰り返していれば、必ずその仕事に飽きがきます。そのため、放出されるドーパミン量は減少します。それを防ぐために、確率を利用するのです。
デキる上司は、激アツリーチで褒める
最初は「仕事をこなせば褒められる」という報酬系を部下に植え付けるために、仕事が終わった後は毎回部下を褒める必要がありますが、「何をしても絶対に褒められる」とわかってしまうと部下のやる気は下がります。これを防ぐために、仕事が終わった後に「褒めない」ことで、確率を発生させるのです。すると、「今回はこれくらい褒められるかもしれない」という報酬予測が部下の脳内で立てられ、分泌されるドーパミン量が増えます。パチンコで最も脳内のドーパミンが放出される期待予測は50~75%程度と述べましたが、部下を褒める割合も“激アツリーチ”くらいの確率にしておくと、部下のやる気を最大限に引き出し続けることができます。
パチンコ機から学べる仕事術はほかにもあります。13年の大ヒット機種「ルパン三世~消されたルパン~」(平和)は、トラウマ回避の仕組みが秀逸で、ユーザーの獲得に繋がりました。
リーチが外れると、大当たりが得られずユーザーはショックを受けます。ですがこの機種では、リーチが外れた後すぐに盤面の機械や液晶を派手に動かすことで、眼球運動を起こし、それが「リーチが外れた」という現実から気を逸らす、つまりトラウマの解消に貢献しました。強いトラウマはやる気を潰してしまうので、トラウマを回避させることは重要です。