中国人の「観光消費額」はアメリカに2倍の差で世界一

バルセロナをはじめ、世界各国の観光地が悩まされている「観光公害」ですが、その要因は多様です。

日本国内でいうと、観光立国戦略のもとで外国人の入国者、とりわけ中国人に対するビザの緩和措置が挙げられますが、世界で共通の要因としては以下のものが考えられます。

・新興国からの観光客の増加
・LCC(Low Cost Carrier=格安航空会社)の台頭で、海外旅行体験のハードルが著しく下がったこと
・SNSなど、言語の壁を超えた情報の無料化が進み、そこに「セルフィー(自撮り)」という新しい自己顕示のトレンドが生まれたこと

新興国の観光客の中で、とりわけ大きな現象は、中国人観光客の爆発的な増加です。

中国国家統計局によると中国人の海外旅行者数は2005年には3000万人でしたが、16年には1億3000万人へと大きく増加。国連世界観光機関の「国際観光支出」によれば、世界での観光消費額も2位のアメリカに2倍の差をつけて、ダントツになっています。

年間1000万人ペースで中国人パスポート受給者が増える

日本政府観光局の「訪問客数の推移」によると、来日する中国人観光客も16年に過去最多の637万人となり、前年比で25%以上も増えたとされています。

アレックス・カー、清野由美『観光亡国論』(中公新書ラクレ)

中国人、特に団体客のマナーの悪さが群を抜いて目立つのは、数が圧倒的に多いので仕方がないのかもしれません。しかし、現在の中国ではパスポートを発給されている人は、まだ人口の数%に過ぎないといわれており、今後、年間1000万人の単位で受給者数が増えていくとされています。

中国人の次には、やはり人口が圧倒的なインド人の観光客も控えています。インバウンド数の伸びとともに「観光公害」は今後も、私たちの想像を超える規模で広がっていくことが予想できます。