ジョブズ氏が、ブランド構築の模範としたナイキ。2018年、大きな反響を呼んだコマーシャルがあった。

アメリカンフットボールのスターであるコリン・キャパニック氏を一連のキャンペーンに起用したのである。

これは、リスクを伴う「賭け」だった。キャパニック氏は、アメリカ国内で論争を呼ぶ存在だったからである。試合前の国歌斉唱の際、掲揚された国旗を前に片膝をつくことで、人種差別の現状に抗議の意を表したキャパニック氏の行動が、賛否の烈しい論争を巻き起こしていた。

ナイキのコマーシャルは、キャパニック氏の写真にこんなキャプションをつけた。「何かを信じよう。その結果、すべてを犠牲にするとしても。」

これに対して、トランプ大統領がツイッターで批判し、ナイキの靴を燃やす動画を投稿する人が出るなど、反発が起こった。

ところが市場はむしろナイキを支持した。商品の売り上げが増えて、株価も上昇した。「ミレニアル世代」と呼ばれる若い世代を中心にナイキの姿勢に対する支持が広がった。

ナイキの広告は、「アスリート」という生き方を支持するというその「DNA」の本質に寄り添った表現だったと言うことができる。ある程度抵抗があっても、自分の信じる道をゆく。そんなメッセージがブランドの真ん中にあるという判断だったのだろう。

現代におけるブランド価値とは何か。破壊的イノベーションで文明が更新されていく現代においては、ありきたりのおとなしい広告では人々の心に届かない。

リスクをとってこそ、成果が挙がる。ブランドも人生も同じことだ。

(写真=AFP/アフロ)
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