内藤 忍
1986年、東京大学経済学部卒業後、銀行や投資顧問会社において資産運用業務を担当。99年、マネックス(現マネックス証券)に入社後は、商品開発、資産設計などを担当する。2005年より現職。セミナーや講演、メディアなどを通じ、幅広く投資家教育に携わる。グルメとしても知られ、個人のブログでは今回紹介する2店のほか、自身のお気に入りの店を公開している。著書に『60歳までに1億円つくる術』、10万部を超える『内藤忍の資産設計塾』シリーズなど多数。
自他ともに認める食いしん坊(笑)として、お気に入りの店で友人や家族と過ごす時間は何よりの活力源。今回、紹介する店をはじめ、仕事の合間を縫って行きたい店がつねに自分の中でリストアップされています。
仕事では、セミナーやメディアなどを通じ、幅広く投資家教育に携わっていますが、じつはお店選びと投資には共通項があると考えています。
たとえば、メディアで紹介されているような有名店や高級店。一般的には、そうした店なら安心感があるようにも思いますが、私はめったに足を運びません。価格以上の満足感やサプライズが期待しにくいというのがその理由で、「高いわりには美味しくなかった」となれば失望感はより大きくなるからです。
投資も同じで、株式投資で陥りがちな失敗のひとつが、誰もが知っているような銘柄を買うこと。そうした有名な銘柄は、すでに割高になっているケースが多く、市場平均より高いリターンを狙うことは難しい。期待が大きい分、マイナス材料で大きく下げてしまうリスクもあります。
“価値>価格”──それが私の株式投資や店選びの基準です。個別株への投資では、割安と思える銘柄を選び、業種を分散して投資する。店をチョイスするなら、味やサービスなどで、価格以上の価値が得られるかどうかがポイントとなります。
「七つ海堂」と「鳥しき」はともに住宅街や路地裏にひっそりとたたずむ“知る人ぞ知る”存在ですが、料理ひとつひとつに店主の並々ならぬこだわりが感じられる。それでいてリーズナブル。文句なく、私にとって“価値>価格”な店です。開店当初から通っていますが、人気店となったいまも店主の謙虚さは変わらず安心して美味しい料理を存分に楽しめます。トップ(店主)の経営姿勢や思いにブレがないかどうかも、銘柄選びと店選びに共通するポイントといえます。
資産運用というと、やみくもにお金を増やそうと考える人が多いのですが、まずは自分なりの投資戦略を持ってほしい。いきなり株を始める前に、自分の夢や目標を設定し、その実現のために「いつまでにいくら必要なのか」を明らかにする。目標がはっきりすれば、取るべき戦略も見えてくる。リスクを取りすぎたり、ムダなコストを支払ったり、といった失敗も減るはずです。
そもそも10倍お金を出したからといって、10倍美味しいものが食べられるわけではないように、お金から得られる幸せは限定的です。だからこそ、自分が本当に必要とするバリュー(価値)を見極め、見合うコスト(価格)とのバランスを取る。美味しい店選び同様、こうした考え方を持つことが、人生の幸せとリンクしたお金との付き合い方につながる第一歩だと考えています。