優秀なビジネスパーソンは「話し上手」といわれる。だが実際には「トーク力には自信がない」と答える人が多い。なぜイメージと矛盾するのか。7人のプロに話を聞いた。第7回はアメ横叩き売りの「巻き込む力」――。(全7回)
※本稿は、「プレジデント」(2018年12月17日号)の掲載記事を再編集したものです。
驚異のトークに、通行人が立ち止まる
「お店の改装に伴いましてー、商品の入れ替えを行う都合上ー、在庫の売り尽くしー。2万円の定価の半額1万円で1週間やってきたセールですがー、今日の6時で終わりが決まりましてー、それまでに1個でも多く在庫を減らしたいんでーす。もったいないけど今から10分間ー、全商品1000円なんでーす」
約500メートルの通りに、400もの専門店がひしめく上野アメ横。11月の平日日中。年末の買い出しスポットは、早くも修学旅行生や外国人観光客でごった返していた。
人ごみの中を進むと、威勢のいいかけ声があちこちから聞こえてくる。店頭に立った販売員による呼び込みと商品紹介だ。冒頭の声は宝飾店から発せられたものだった。1万円以上のアクセサリーや時計が10分だけ一律1000円……。突拍子のない値段設定に、どんな商品か確認したくなって足を止めてしまう。
タイムセールという「時間」で通行人を取り込む店がある一方、「量」で勝負する店もあった。アメ横名物、チョコレートの叩き売りだ。店頭に積んだ菓子類を、1袋1000円でビニールに入るだけ詰め込んでいく。
「ひとつ1000円。買うお客さんはどうぞ前のほうに。今日はこのチョコレートが入ります。入れちゃえ入れちゃえ。おまけです。牛乳で飲むチョコレートが入ります。ひとつ200円。入れちゃえ入れちゃえ」