大歓迎すべき、グッドクラッシュ

相手の人格や信条を傷つけてはいけませんが、お互いにファクトとストーリーを戦わせる「グッドクラッシュ」であれば、後を引くことはありません。現に、私は激しい口論をした昔の上司と、今でも親しく付き合っています。「単なる友達付き合いの友情よりも、上下関係を問わずに丁々発止やり合うビジネスを通じて芽生えた友情のほうが長続きする」というのが私の持論です。

企業にとって最大のリスクは、「リスクを取らないこと」であり、経営者にとって最大の罪は、「経営危機に陥るのがわかっていて何もしないこと」です。また、経営者の大きな役割の1つが「強い組織」をつくることです。そのためには、経営を“自分ゴト”と受け止める当事者意識を、スタッフに植え付けることが重要になってきます。

強靭な企業体質にしたいのなら、経営者はファクトとストーリーによってリスクをきちんと説明し、社員にも危機感を抱かせるべきでしょう。そうすれば、リスクに果敢に立ち向かっていくチャレンジ精神が組織に生まれます。つまり、トップに求められるのは、耳の痛いことでも直言できる資質を涵養していくことだと考えています。

ただし、相手を叱責したり、苦言を呈したりする際には、後を引かないように、その場でフォローすることも忘れてはいけません。頼りにしている部下なら、叱った後に「期待しているからな」と、必ずひと言添えましょう。もし心許ない部下なら、「一緒にやろう」と付け加えるといいでしょう。

耳の痛いことでも直言できる資質を涵養していくこと

櫻田謙悟(さくらだ・けんご)
SOMPOホールディングスグループCEO取締役社長
1956年、東京都生まれ。78年早稲田大学商学部卒業、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン日本興亜)入社。2010年損害保険ジャパン代表取締役社長。12年NKSJホールディングス(現・SOMPOホールディングス)代表取締役社長。15年より現職。
(構成=野澤正毅 撮影=渡邉茂樹)
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