「短期留学」は1カ月で40万~50万円くらい

【浅見】私は高校生の時にフランスに1カ月行ってたんですが、だいたい30万円でした。フランスのわりに安かったのはホームステイだったから。あと、神奈川県がいくらか出してくれたんですよ。フランス語が勉強できる高校だったんですけど、仏検を持っていて筆記が通れば補助をもらえるというものでした。

【原田】神奈川県はすばらしいね。僕が以前フランスの若者を調査していて驚いたのは、貧しい家庭の子でも国の補助で乗馬が習えること。日本は特に若者に対して自己責任論の強い国だから、世界の先進国と比べてきちんとした奨学金の支給が少なすぎる。地方自治体も、若者が東京に出ていってしまうことを嘆くだけじゃなく、今の若者ニーズに合った補助金を出すべきだよね。ハワイで遊ぶだけでは困るけど、その地域の未来を担う人材を育てるには、彼らのニーズをきちんと把握できてないといけない。

【須田】行き先にもよりますけど、普通は1カ月で40万~50万円くらいじゃないでしょうか。僕はオーストラリア留学で60万円だったんですけど、大学が補助金を30万円出してくれたので、実質30万円で行けました。

【原田】留学補助を与える大学も増えているんだね。補助金をもらうにあたっては、試験や面接はあるの?

【須田】いえ、ありません。なるべく留学未経験者を対象にしているプログラムで、TOEICのテストを受けて志望留意書が通れば補助金を受けられます。僕の時は130人くらい受けて100人くらい通ったはずです。

短期留学で留学生数を稼ぐという姑息な手段

【原田】130人中100人も! それは倍率が低い。それならハワイで遊んじゃうやつも含まれちゃうね。しかし大学は、なんでそんなに補助金を出すんだろう。

【須田】「これだけ留学させてます」ってアピールになりますからね。実際、短期留学の場合は補助金を出す大学は多いのに、長期留学だと返済が必要な奨学金制度を採用している大学が多いので、補助を出しているとは言えないです。

【原田】そうか。少子化で大学も困っているから、生徒を取るための保護者へのアピール材料に留学を使うようになってるんだ。しかも、短期留学で留学生数を稼ぐという姑息な手段で。長期留学こそ大学が推奨して補助を出すべきなのに。

ハワイで友達と戯れる大学生と、留学の内容はさておき、金のかからない短期留学生の輩出数で食いぶちを維持しようとする大学との共犯関係が成立しているんだね。「シアトル・マリナーズの試合が見られます」の文字がパンフレットに躍るわけだ。大学の「短期留学生数」にだまされてはいけないね。

原田曜平(はらだ・ようへい)
サイバーエージェント次世代生活研究所 所長
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年12月よりサイバーエージェント次世代生活研究所・所長。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『さとり世代』『ヤンキー経済』『これからの中国の話をしよう』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」レギュラーとして出演中。
(構成=稲田豊史 撮影=プレジデントオンライン編集部)
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