韓国や台湾は、もはや「国内旅行の延長」

【原田】映えよりグルメ重視の若者はベトナムに行くんだ。すごく非日常でもないし、日本とまったく一緒でもない。ラグジュアリーすぎない、アドベンチャーすぎない。「サイコーにちょうどいい」。要は、インスタ映えとチル(第2回参照)のバランスが取れてるんだ。

【牧之段】ヨーロッパの食べ物は日本人としては結構挑戦になりますけど、ベトナムはなんとなく日本食の延長上にあるというか、味覚的にも食材的にも日本人の口に合いますよね。あと、ビールを飲み始めたばかりの大学生が屋台で現地のビールを飲んで、「おいしいね!」って言うには、うってつけ。まさに、ちょうどいい。

【原田】ある種、国内旅行の延長みたいな?

【牧之段】国内旅行の延長は韓国とか台湾です。そこをもう少し「海外っぽく」すると、ベトナム。

ベトナム・ホイアンの様子(写真提供=「若者と旅」座談会メンバー)

【原田】なるほど。距離順なんだ。今の若者にとって、まずは東アジアの韓国か台湾。次のステップは東南アジアのタイかベトナム。ただし、タイは日本人が行きすぎているから、若者の間では、今、ベトナムがきている。で、グアム、サイパンを飛ばして親とハワイ、と。

【神谷】「海外旅行!」というのを感じれるのはベトナムあたりからかもしれないです。

【原田】えっ? 日本から距離で一番近いのは韓国で、若者たちもたくさん韓国に行っているけど、そうじゃないんだ?

【神谷】韓国はもちろん海外ですが、値段も距離も手軽で、「国内旅行の延長」のような感覚で旅行する大学生が多いように思います。

【原田】それくらい若者の間では韓国は近い国になっているんだね。

留学先としてのドイツは「安くて、英語が通じる」

【原田】バブルの頃に比べて明らかに日本人旅行者の数が落ちてるのは、グアムもそうなんだけど、オーストラリアもそうなんだよね。僕は小学生の高学年から中学生の途中まで親の仕事でシドニーに住んでいたので、先日、シドニーへの旅行者も滞在者も日本人が少なくなっていて悲しかった。

オーストラリアは30年近くたくさん移民を受け入れ、経済成長を達成してきたけど、この30年でオーストラリアにおける日本人のプレゼンスは大幅に下がってしまった。僕がいた頃の日本とオーストラリアは蜜月の関係だったのに。ゴールドコーストなんて日本が開発したといってもいいくらいだけど、今は閑古鳥が鳴いてるらしい。

【小野里】オーストラリアは留学先としては聞きますけど、旅行で行ったという話は周りでは聞かないですね。

【原田】留学先で言うと、神谷さんはドイツに行って帰ってきたばかりだよね。留学先としてのドイツを選ぶ大学生が結構増えてきているみたいだけど、なんでだろう。ドイツ生活はどうだった?

【神谷】私ははやってるから行ったわけじゃないんですけど(笑)、食品や雑貨など、生活必需品がとにかく安くて、学生は暮らしやすかったです。

【原田】イギリスやフランスに比べれば、ドイツは物価がかなり安いよね。先進国なのに安く留学できる。加えて英語圏じゃないけど、国民の多くが英語をうまく話せる。英語圏でアメリカより安いカナダの大学だと志望者も増えて競合が増えるから、楽にリーズナブルに留学できるのがドイツなのかもしれないね。それから、ドイツに限らず、セブ島の語学留学や、韓国留学なんかも増えているし、かつてに比べると留学先が多様化しているのは確かだろうね。