いま「若者の旅行観」に大きな変化が起こりつつあります。長年、若者の消費動向を追いかけているサイバーエージェント次世代研究所・所長の原田曜平さんは「ハワイに短期留学する若者が増えている。話を聞くと、実態は留学というより観光だ。履歴書に『留学した』と載せることが、その目的になっている」といいます――。(第3回、全3回)
サイバーエージェント次世代研究所・所長の原田曜平さん(撮影=プレジデントオンライン編集部)
 サイバーエージェント次世代研究所・所長の原田曜平さんは、現役の高校生・大学生たちと日常的にコミュニケーションをとり、共同作業をすることで、若者の価値観やトレンド、それらの時代ごとの微細な変化を、15年以上にわたって定点観測してきました。
 原田さんは、ここ数年で、最近の若者、特に大学生の「旅行観」に大きな変化が見られるようになっていると指摘します。それらを明らかにすべく、「旅行には行くほう」だという9人の現役大学生に集まってもらい、若者の旅行観について議論しました。
 現代の若者は旅行に何を求め、旅でどんな消費活動を行っているのでしょうか。座談会の模様を3回にわけてお届けします。第3回は「海外旅行」についてです。
<座談会の参加メンバー>
正田郁仁 法政大学 経営学部 2年
神谷菜月 明治大学 経営学部 3年
須田孝徳 早稲田大学大学院 商学研究科 修士1年
牧之段直也 早稲田大学 政治経済学部 3年
小野里奈々 法政大学 社会学部 2年
高貫遥 明治大学 経営学部 3年
今野花音 上智大学 文学部 3年
佐藤美梨 慶應義塾大学 文学部 2年
浅見悦子 青山学院大学 地球社会共生学部 3年

「ハワイ」は家族、ちょうどいいのは「ベトナム」

【原田】海外の行き場所で目新しいところはある?

【今野】私の周囲にはアフリカに行ってる女の子がちょくちょくいます。ルワンダ、エチオピア、タンザニアあたり。

【原田】女の子だけでアフリカって勇気あるなあ。まあ、今は女子の方がたくましくなっているし、ボランティアや経済支援などの観点からもアフリカに注目する若者も増えてきているのかな。

以前の大学生や若手社会人の初海外旅行ってグアムやサイパンが多かったんだよね。まずはグアムに行って、その次の機会にハワイ、みたいなパターンが多かった。君らの周りでグアムやサイパンに行ってる子は?

【一同】あまり聞いたことがないです……。

【原田】やはり。実は約20年前、日本人はグアムに年間100万人以上も行っていた。僕も社会人になってからの彼女との初めての海外旅行はグアムだった。

ところが、いまグアムに行く日本人は、年間62万人(2017年)。日本人が減り、中国人と韓国人が大幅に増えている。若者の人口減だけでは説明できない減り方だから、きっと何か新しくて大きいニーズをとらえ損なっているんだと思う。

グアム政府観光局「The Economic Impact of Tourism on Guam」(2016)より抜粋。日本の占め得る割合が減りつづけていることがわかる。

【原田】ちなみに、ハワイはどうかな?

【小野里】ハワイは家族で行くイメージですね。アジアに比べて渡航費も高いですし。

【原田】なるほど。今の若者は親と大変仲良くなっているので、若者が1人で「グアム→ハワイ」とステップを踏んだ過去とは違い、いきなり親にハワイに連れて行ってもらえるんだね。

ごく普通の若者の間で、ベトナム人気が急上昇

【今野】アジアだとベトナム、タイ、シンガポールが人気です。

【原田】僕が若い頃も東南アジアにバックパッカーなどで行く若者は多かったけど、最近、バックパッカーなどの尖った若者に限らず、ごく普通の若者の間で、ベトナム人気が急速に上がってきているよね。どうしてだろう?